家の中が混乱していると子どもたちに何が起きるのか

自分自身が育った家の中を想像して，次の質問に答えてみてください。「まったく当てはまらない」は1点，「どちらでもない」は3点，「とても良く当てはまる」は5点の5点満点で得点をつけてみてください。

1.家の中ではいつも何か騒動が起きていた
2.必要なときに必要なものを見つけることができない状態だった
3.ほとんどいつもせわしなく動き回っていた
4.いつも何かものの上に乗っているような状態で生活していた
5.家の中は動物園のように混乱していた
6.必要のない心配事がたくさんあった
7.どんなに頑張っても，いつも遅刻しそうになっていた
8.家の中でリラックスするのは難しかった
9.家の中で邪魔されずに会話をすることが難しかった
10.家の中はとてもうるさい状態だった

何点くらいの得点がついたでしょうか？

カオス状態

これらの質問項目は，実際に研究で使われているものそのものではなく，一部を意訳して，得点がつけやすいように逆転項目も逆転させない方向に修正したものです。

質問項目を見ると分かると思うのですが，これらの質問項目が何を測定しようとしているのかというと，家庭の中がガどれくらい混沌とした状態であるかです。

というのもこの尺度は，The Confusion, Hubbub, and Order Scale（混乱・喧噪・秩序尺度）といって，省略形はCHAOSと呼ばれています。CHAOS……まさに「混沌」ということで，うまく名前をつけたものです。

カオス状態がもたらすもの

これまでの研究の中で，この家の中のカオス状態が，子どもたちの発達にあまり良くない影響をもたらしていくことが明らかにされています。たとえば，規則正しい生活にとって悪影響があるとか，学業成績にも悪影響があるとか，知能にもあまりよくない結果をもたらすとか……。

では，実際に家の中のカオス状態が子どもたちの学業成績に影響しているのかどうかを検討した研究をひとつ見てみましょう。こちらの論文です（The association between home chaos and academic achievement: The moderating role of sleep）。

The association between home chaos and academic achievement: The moderating role of sleep - PubMed

この研究のポイントは，混乱した家庭環境が子どもたちの睡眠習慣の悪さをもたらし，そのことが学業成績の低下につながるというプロセスを検討しようと試みている点にあります。