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性格検査はあなたにとって役立つのだろうか

オンラインで性格検査を受ける「理由」はどこにあるのでしょうか。楽しみのためでしょうか?就活に向けて自己分析をするため?まだ知らない自分自身を知りたいという欲求でしょうか。自分の将来の方向性を知るため,という人もいるかもしれません。


どこで使われているのか

世界的に,性格検査がもっとも使われている場所はどこなのでしょう。

おそらく,企業です。ただし「性格検査」だとはっきりとは示していないかもしれません。「適性検査」だとか「○○チェック」だとか,その他さまざまな名前がつけられていることかと思います。しかし,内容は「性格検査」です。作成方法もそうですし,文章やフレーズに対して何段階かで回答が求められます。そして,複数の質問項目への回答を合算して「○○得点」を算出します。

ある推計によると,企業が求職者に対して行う適性検査(性格検査)の市場規模は95億ドルにもなるそうです。一大産業です。

複雑さ

たとえ,質問項目に回答して何かしらの結果が出てきたからといって,そのことが私たちの行動に圧倒的な影響を及ぼすのでしょうか。日々の活動は数多くの出来事のくり返しで,その中で私たちはさまざまな判断を行います。そのひとつひとつのことについて,性格検査の結果は教えてくれるのでしょうか。

もちろん実際に,外向的な人物に比べて内向的な人物は,人が集まっている場所に行くことを好まず,初対面の人に対してフレンドリーに接することは苦手でしょう。また,実際の交友関係もSNS上の交友関係もあまり広くはありません。

でも,「しない」わけではありませんし「できない」わけではありません。私たちは必要に迫られれば,それなりに振る舞うものです。判定結果は絶対的なものではなく,「だいたい」です。この「だいたい」の程度は,心理学者たちが思っている程度と心理学を学んでいない人々が思っている程度との間には,ずいぶん乖離がありそうです。

さらに,私たちは環境から新しい行動パターンを学んで身につけます。私たちは環境の中で適応していくのです。新しいスキルを学んで,習慣を変えて,日々の行動パターンが変化していくことで,性格検査への回答が変わっていくのも当然です。

まるで,毎日の習慣を変えれば体重が増減するようなものです。

なぜ性格検査をするのか

では,どうして性格検査が開発されていて,どうして企業は何十億ドルもかけて人々の性格を検査するのでしょうか。それは「集団」を相手にするからです。平均して大勢を相手にしたときには,おおよそある心理特性の得点が高い人々と,低い人々との間には,何らかの違いが見られるようになります。集団を相手にして,パフォーマンスを最適化していくことを考えるときには,性格検査が役立つ可能性が出てきます。

研究でも性格検査(心理尺度とも呼ばれますが,あれこれ違いはあれ構造は同じです)をよく使用します。これもたいていの場合は「集団」を相手にします。集団の中で,ある心理傾向がより見られる人とより見られない人を比較して,その特徴を見出すために用いられるのです。

また病院やクリニック,臨床施設などの臨床場面では,「個人」を相手に性格検査をします。しかしそこでは,必ず専門家が判定に関与します。性格検査「だけ」で何かが判定されることはありません。医師(精神科医)や,公認心理師や臨床心理士などの資格を持つ人々が,判定したい相手の様子をよく観察して会話を交わし,他の検査も組み合わせることで全体的に相手がどのような状態であるかを判断します。

健康診断

健康診断で,さまざまな「検査」を実施します。しかし,健康診断の検査「だけ」で病気が判定されることはありません。

検査はあくまでも「検査」です。「もしかしたらこうかもしれない」という可能性を提示することはあっても,個人の状態や特徴を断定することはないのです。

性格検査には誤差がつきものです。その誤差の範囲の中で,個人を「あなたはこういう人物だ」と断定することには,リスクが伴います。一方で,大きな集団を相手にして,おおよその範囲で人々の特徴を掴んで何らかの対処を試みるときには,性格検査を使うことは理に適っています。

もちろん,性格検査をして「自分はこういう人間なんだ」と考えを深めることを否定はしません。しかし,私自身も心理尺度をたくさんつくってきましたが,そこを断定するほど自信をもって言えるかというと,疑問です。

参考

今回はこちらの記事を参考にしました。

Do Personality Trait Tests Predict What You’ll Do?



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