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“Always Look on the Bright Side of Life”がタイトルについた心理学の論文は何本あるのか?

Always Look on the Bright Side of Life”というフレーズを知っていますか?

イギリスのコメディ・グループ,モンティ・パイソン(Monty Python)の映画のなかで流れた歌の歌詞(タイトル)です。もう存命のメンバーたちも80歳超え……しかし,いまでもカルト的な人気を誇っています。私も,たまにダラダラとテレビシリーズを流し見してしまいます。

この歌が流れたのは,『ライフ・オブ・ブライアン(Monty Python's Life of Brian)』という映画のエンディングです。予言者と間違われた男がドタバタに巻き込まれるという,風刺の効いたモンティ・パイソンらしい映画です。Netflixでも観ることができますので,機会があったらどうぞ。


論文

さて,このフレーズ“Always Look on the Bright Side of Life”は,語呂がいいのか心理学の論文でよく使われます。

私はモンティ・パイソンのテレビシリーズから映画まですべて観ていますので(もちろんリアルタイムではなくDVDで),このフレーズが出てくると「これこれ」という感覚になるのですが,海外の研究者も同じなのでしょうか。

また,これまで海外の研究者とやり取りしてきた中でも,モンティ・パイソンが好きそうな研究者は何人か思い浮かびます。もちろん世代的な差もありますが。

というわけで,アメリカ心理学会の心理学系論文データベースPsycINFOで,このフレーズをそのまま検索してみました。

反すうはパフォーマンスにつながるのか

最初の論文はこちらです。“Always Look on the Bright Side of Life” The Role of Adaptive Rumination on Goal Pursuit and Cognitive Task Performance

抑うつ傾向には反すうがつきものです。反すうというのは,ネガティブなことがくり返し頭に浮かんで消えてくれないことで,これは各種のパフォーマンスを低下させる要因になります。しかし,ときに反すうをすることはパフォーマンスの向上に役立つとも指摘されます。

反すうの中でも,内省をして反省をすることが,パフォーマンスにつながるのではないかという仮説を立てて検証を試みているのがこの論文です。より内省や反省をする人は,より多くの努力を必要とする課題に集中するように求められると,より良いパフォーマンスを発揮することができるようです。

反すうにも良い面があるという研究です。

感情調整の目標

次の論文です。Always look on the bright side of life? Exploring the between-variance and within-variance of emotion regulation goals.

感情をコントロールしようとする目標は,とても適応的な機能だと言われています。この研究では,9日間毎日,その日の最もネガティブな出来事に付随して感情を調整しようとする目標がどのようなレベルを示すかという調査が行われています。感情を調節しようとする傾向は,ずいぶん人によって異なるという個人差が観察される結果が示されています。

信仰心を持つことはポジティブな経験なのか

次の論文はこちらです。Always look on the bright side of life: Religiosity, emotion regulation and well-being in a Jewish and Christian sample.

信仰心が強い人ほど,ポジティブな感情を経験して満足度が高いのでしょうか。この研究では,ネガティブな出来事を経験したときにもその経験を考えなおして捉え直す,認知的再評価が宗教心に関連しており,そこから人生満足度やウェルビーイングにつながる可能性が示されています。

躁状態とタフな傾向

次の論文はこのタイトルです。

Always look on the bright side of life!”—Higher hypomania scores are associated with higher mental toughness, increased physical activity, and lower symptoms of depression and lower sleep complaints.

この研究で注目しているのは「軽躁状態」です。躁というのはうつ状態の逆で,全体的に「ハイな」状態であることです。病理までは行かなくても高揚した気分や自分への過大評価,睡眠欲求のなさ,集中力の増大あるいは過度の注意散漫など,いくつかの特徴をもちます。

この研究では,軽躁状態の得点が高いほど精神的なタフさが高く,身体活動が活発で,抑うつ症状が少なく,睡眠への不満が低いなどの特徴が示されています。軽躁状態はどちらかというと好ましい状態を示すようです。

ニュースの良い面と悪い面

次の論文は,ニュースの伝え方を扱ったものです。

Always look on the bright side of life: Making bad news bivalent.

ニュースを伝えるときに,全体的によいニュースを伝える中で悪い内容を伝えるパターンと,全体的に悪いニュースを伝える中で良い内容を伝えるパターンでは,何が違うかということを検討しています。

結果から,悪いニュースを背景としてよい要素を交えて伝えると,ニュースの内容に悪い内容と良い内容とが含まれていることを適切に認識しやすいということが示されています。

ポジティブに考えろ

次はこの歌にまさにぴったりの,ポジティブシンキングについての社会学の論文です。

Always look on the bright side of life: Cancer and positive thinking.

がん患者におけるポジティブシンキングの役割とは何なのか,またポジティブシンキングという「イデオロギー」が新自由主義的で資本主義的文化を反映しているなど,社会学的な考察が行われている論文です。

ポジティブ情報に注目

次は,ポジオティブナ情報に注意を向けることの効果について検討したこちらの論文です。

Always look on the bright side of life: The attentional basis of positive affectivity.

実験的にポジティブな情報に対する注意反応を喚起します。この注意を向ける反応が,ポジティブな感情へとつながる可能性があることを示したという論文の内容です。いい出来事に注目すると,ちゃんとポジティブな感情が生まれてくるようです。

ユーモアの効果

こちらがPsycINFOで見つかった最後の論文です。

Always look on the bright side of life? Adult attachment and the interpersonal regulation of stress: The mediating role of humor styles

愛着スタイルが不安定で,人間関係の中でストレスを抱きやすい人は,ユーモアの中でも攻撃的なユーモアや自虐的なユーモアといった,ネガティブな側面のユーモアを使いがちで,そのことがストレス反応の調節に失敗することへと結び付く可能性があるよ,ということを示しています。

Always look on the bright side of life?

さて,このタイトルがまさにぴったり,という論文もあれば,無理にこっちに寄せたんじゃない?という論文もあるような印象です。

まあ,いずれにしても,こういう定番フレーズはときにうまく使いこなしたいものですね。



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