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科学の未来の姿

最近,『マスター・アルゴリズム 世界を再構築する「究極の機械学習」』を読みました。どんなことにも適用できる,万能の機械学習アルゴリズムを確立することは可能なのか,という内容です。それぞれの機械学習手法の概要もおおまかにわかりますし,実例も多く,エキサイティングな内容です。

仮説検証

この本の中で,科学の未来はどうなるのかという一節が書かれていました。

次のような内容です。

科学の未来を知るには,マンチェスター・バイオテクノロジー研究所(Manchester Institute of Biotechnology)の一室を覗いてみればよい。そこでは,アダムという名のロボットが懸命に働いており,酵母菌のどの遺伝子がどの酵素を表しているのかを明らかにしている。アダムには,酵母の代謝のモデルと,遺伝子とタンパク質について全般的な知識が備わっている。これらの知識に基づいて仮説を立てて,この仮説を検証する実験を計画し,その実験を実際に行い,結果を分析し,そしてまた新たな仮説を立てるということを,確信がもてるようになるまで繰り返す。現状ではアダムが確信する前に,人間の科学者がアダムの結果を別途検証しているが,将来的には科学者ロボット同士に互いの仮説を検証させることもできるだろう。(p. 56-57)

マンチェスター・バイオテクノロジー研究所

マンチェスター・バイオテクノロジー研究所は,イギリスのマンチェスター大学の中に設立されている研究所のようです。

ロボットが実験をしている様子は,こちらの記事にも書かれています。

自動化処理

研究の目的によっては,心理学でも自動化処理することができる部分があるかもしれません。たとえば私が関係する研究分野であれば,ある概念を測定するのに最適な単語や文章を次々と試しながら,最適化していくことが必要になります。

最初に大きな文章や単語のプールを作成していくことは必要ですが,そこからランダムにピックアップして,オンライン調査フォームを作成し,調査を依頼し,調査に回答してもらい(ここは実在の人間にお願いしなければいけませんが),得られたデータを分析し,何らかの妥当性基準との関連からより良いものを残し,次の組み合わせを試し……と,作業を自動的に繰り返していくことは,できなくもないかな,と思いました。

科学的な手続き

非常に多くある候補の中から,最適なものを探していくような作業は,研究の中で必要とされることがあります。たいてい,こういう場合は研究者が経験から何となく選択することも,先行研究からなんとなく選択することもあるのですが,もしかしたら見逃しているところが多々あるかもしれません。そういう作業を自動化することができると,研究の進展には役立ちそうです。

また,科学的な研究は,ある程度の部分を研究方法に依存します。できるだけ人間の主観を排して,何らかの基準に沿った結果が得られるかどうかを繰り返し検討していくことがよくあります。もしかしたら,将来的には,どんどん科学的な研究に人間の関与する部分が少なくなっていくかもしれませんね。

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