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自分を過剰に評価する人は健康なのか

私たちは,自分自身を評価することからなかなか逃れることができません。学校の中でも日常生活でも仕事でもSNSを使う中でも,つい自分と他の人を比較して,「自分はどうだろう」と評価をしてしまいます。

一口に自己評価と言っても,さまざまな特性が考案されています。たとえば,自尊感情(自尊心)は,自分自身を全体的に評価したときの感情をともなう評価のようなものです。いわゆる「自己肯定感」と似たようなものなのですが,心理学では自尊感情という言葉で研究されています。

自己高揚

一方で,過度にポジティブな自分の捉え方をする傾向もあります。これを自己高揚(self-enhancement)と呼んだりします。「過度にポジティブ」というと,多くの人にはあてはまらないように思うかもしれませんが,私たちはみな,多かれ少なかれ自己高揚の傾向を持っています。

たとえば,仕事でも勉強でも何かの作業の結果でも,多くの場合,私たちは「平均よりはまあまあできているのではないか」と考えがちです。平均以上の人が半分以上いては,平均が平均ではなくなってしまうのですが,つい普通よりはマシと考える傾向があるということです。

また,成功したときには自分の関与を多めに,失敗したときには自分以外に原因を求めがちという傾向も私たちにはあります。こういった認識の仕方も,自己高揚にかかわるものです。

パーソナリティ特性も関連します。自分のことを過大に評価するナルシシズム(自己愛)は,自己高揚に関連する代表的なパーソナリティ特性です。

健康

自己高揚傾向を強く持つ人というのは,健康なのでしょうか。それとも不健康なのでしょうか。特に身体的な健康について気になるところがあります。

たとえば,自己高揚傾向の強さは,現実を歪めて見る傾向に関連するのですから,自分自信の健康についても問題を見逃してしまうかもしれません。でも一方で,基本的にポジティブな自己認識なのですから,健康な人が自己高揚をしがちなのかもしれません。

では,実際にはどのような関連が見られるのでしょうか。今回はメタ分析で自己高揚傾向と身体的な健康との関連を検討した研究を見てみましょう。こちらの論文です(Self-enhancement and physical health: A meta-analysis)。

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