敏感な性格はどれくらい遺伝するのか
HSP(Highly Sensitive Person)について書かれたネット記事は,どんどん増えています(この記事もそれに便乗……?)。
以前にも,HSPがどのようなパーソナリティ特性に関連するのかについて記事を書いたことがあります。一応,私もHSPに関連する研究業績に名前を連ねているひとりですので……。
よく書かれているフレーズ
HSPの記事の冒頭に,よく書かれているフレーズがあります。それは......
◎非常に感受性が強く敏感さ・繊細さをもっていること
◎その敏感さが生まれつきの気質であること
という2つのポイントです。
あとは「生きづらさ」という単語がここにくっつくこともありますが,それはちょっと置いておきます。もともとの定義の中には「生きづらい」と書いてあるわけではないように思いますし,アーロン先生のHPにも「普通の人です」と書かれています(Your trait is normal.)。特別なケースではなく,珍しい人ではありませんよ,というわけです。
どれくらい遺伝する
生まれつきということは,HSPの遺伝率は高いはずです。通常,ビッグ・ファイブ・パーソナリティなどのパーソナリティ特性は,おおよそ半分が遺伝要因,半分が環境要因(非共有環境)から影響を受けるということが知られています。共有環境(主に家庭環境)の影響力は「ほぼゼロ」だと推定されています。
どうやって推定するのかというと,一卵性双生児のきょうだいの類似性と二卵性双生児のきょうだいの類似性の差から推定するというやり方です。
じゃあ,HSPについて同じように遺伝率を推定したら,他のパーソナリティ特性よりも遺伝率が高くなるはずですよね。
遺伝率を推定すると
そこで,実際にどうなるのかを見てみましょう。ただし,HSPの尺度ではなく,ほぼ同じ概念のHighly Sensitive Child (HSC) の尺度を用いています。HSPの子供版ですね。ほぼ同じものを測定していますので,これで遺伝率を推定しようというわけです。なおこの尺度は,ease of excitation(易興奮性),low sensory threshold(低感覚閾),aesthetic sensitivity(美的感受性)という3つの下位尺度があります。
こちらの論文です(Genetic architecture of Environmental Sensitivity reflects multiple heritable components: a twin study with adolescents)。
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