ダークパターンとは
ネット上のサービスを使っていると「面倒だな」とか「しまった」と思ったことはないでしょうか。
広告をクリックして消そうとすると,間違えて広告自体をクリックしてしまって外部のサイトに飛んでしまうとか,解約しようとするけれどもなかなか目的が達成されないとか,いつの間にかサブスクリプション契約を結んでしまっているとか……。
ダークパターン
今回は,ネット上でよく見られる欺瞞的なユーザーインターフェースについてまとめられている,『ダークパターン:人を欺くデザインの手口と対策』という本の紹介をしたいと思います。
著者はハリー・ブリヌル(Harry Brignull)です。心理学や認知科学を学び,博士号を取得した後で研究者として働いていたのですが,現在はユーザーエクスペリエンスの専門家としてコンサルティングなどをしているようです。そして,「ダークパターン」という言葉の生みの親でもあります。
ディセプティブパターン
本のタイトルは「ダークパターン」なのですが,より正確には「ディセプティブもしくはマニピュラティブパターン」と呼ぶ方がよいようです。欺瞞的で人をだますパターンや,人を操作するパターンということですね。
他にも,同じような意味で用いられる言葉はあるようで,本の中でもまとめられています。
どんなパターン?
ディセプティブパターンには,どのようなものがあるのでしょうか。ひとつの分類方法として,本の中では次のものが挙げられています。
とはいえ,ディセプティブパターンの分類方法にもいろいろなものがあるようです。また,「これ以上パターンが増えない」と考えることも間違っているようです。
私たちにとって役立つパターンと,害になるパターンとは表裏一体で,分けることも難しいのです。認知的に負荷のかからない正しい方向へのパターンは,少しひねれば「利益へと誘導される」パターンになるのです。そして,ひとたび「利益を生み出す」と認識されれば,そこに隠れている問題を振り返ることも少なく,どんどん使われていきます。使えると認識されれば,次々と使う人が増えていくのです。
ブライトパターン
ディセプティブパターンに対抗して,「ブライトパターン」や「フェアパターン」を増やせばいいじゃないかという意見もあるようです。しかし,教科書の中には書かれていても,やはり普及はしていかないという問題があります。
ブライトパターンを義務化しても,効果は疑問が残るようです。というのも,デザインの可能性は無限に存在しており,言葉の選択,画像,レイアウト,ボタン,インタラクティブな要素などあらゆるものがデザインに含まれます。ビジネス上の目的でデザインが行われるのですから,少しでも「利益が上がる」ことが最優先される傾向があるのです。
ブライトパターンを使っていると言いながらも,実はディセプティブパターンになってしまっている,という仕組みにすることもできるだろうな,と想像できます。本の中には,次のように書かれています。
対処は
ネット上の活動が営利目的であり,あまりに多くのサイトがあることを考えると,ディセプティブパターンをひとつひとつあげつらって問題にすることも生産的ではありませんし,一部を問題にするだけのように思えます。そして,すぐに新しいパターンが生み出されるのですから,法的に規制することも困難です。
著者は「ユーザーインターフェースのデザインを説得行為として考える」という点を重視することを提唱しています。デザインは,企業の目的とユーザーのニーズの間でバランスを取る行為なので,常に「どのような結果が生じているか」を慎重に見ておく必要がありそうです。
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