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創造性のステップ

今回は,フロー体験の研究で知られるM.チクセントミハイの著書『クリエイティヴィティ―フロー体験と創造性の心理学』から,創造性のステップを紹介してみましょう。

この書籍は,創造的な偉業を達成した多くの人びとへのインタビューから着想を得て,まとめられたものです。他の部分にも興味深い点がたくさんありますので,それはまた後日,紹介していきたいと思います。

以前から,創造性のプロセスは5つのステップで説明されてきたそうです。順番に見ていきましょう(p.90-91のあたりです)。

(1)準備期間

創造性の最初の段階は,準備期間です。意識的か否かにかかわらず,興味を惹かれ,好奇心をかきたてられ,扱いにくい問題に没頭するような時間が,創造性を発揮するのに必要な期間なのだそうです。

なんとなく,創造性というのはいきなり「ぱっ」と思いつくようなイメージがあるかもしれませんが,実はしばらくの期間,ある問題に没頭することがまず必要だとされています。

(2)潜伏期

この期間は,意識の下でさまざまなアイデアが激しく動き回ります。アイデア同士の独特な結びつきが,この激しく動き回るアイデアの結果として生じるかもしれません。あるアイデアを直線的に解決するのではなく,勝手に動き回ることで思わぬ結びつきが生じてきます。

これは,私自身もなんとなく理解できます。ああでもない,こうでもないと考えながら,しばらく放っておくような期間ですね。すぐにはなかなか愛で母浮かんできません。

(3)洞察

3つ目の段階は,「アハ体験」のような体験です。まさに,浴槽に浸かったアルキメデスが「エウレーカ!」(我,発見せり!)と叫ぶような,パズルのピースがそろったような感覚です。

こういった感覚が得られるまでには,けっこう長い期間が必要であるように思います。また,人生で何度も起こることではないのですよね。こういう経験ができるのは貴重です。

(4)評価

次のステップは,評価になります。得られた洞察が重要で,このまま追求すべきかどうかを決めるために,思いついたアイデアを吟味して評価するステップが必要だということです。

本の中では,「この段階はプロセスのなかでもっとも感情的に辛い部分であり,まったく確信がもてずに不安を感じる時期である」(p.90)と書かれています。なかなか悩ましい段階かもしれません。思いついたはいいけれど,本当にこれはよいアイデアと言えるのか,本当に解決できるのか,本当に斬新なものなのか……自分で考える必要があります。

(5)仕上げ

最後の段階は仕上げです。これは,アイデアを形にしていく段階ですね。この段階も,なかなか辛い体験かもしれません。アイデアを思いついても,それを現実のものにして,多くの人に納得してもらう形にするのは,これまた大変な労力がかかるものです。

研究であれば,アイデアに基づいて実際の研究を進めていくことになります。となると,まだまだ先は長いというイメージですね。

創造性の五段階

以上が,創造性の5つのステップです。本当に創造的な体験は,人生のなかでもそんなに頻繁に起きるものではありません。先ほども書きましたが,こういう経験ができることは幸運なことです。

また,アイデアを思いついても,それを形にしていくことが重要です。創造性というのは,単にアイデアを思いつくことだけでなく,世の中にどうやって受け入れられていくかというステップが不可欠だということがわかる五段階の内容です。

そして,途中まで実際にやってみてからうまくいかないことがわかったり,実は誰かが考えていることが判明したりして,また元に戻るということも起こりそうです。そういう意味で,創造性の段階は直線的に進んでいくものではないとも言えそうです。

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