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孤独な人は孤立しているのか

割引あり

孤独感というのは,社会的関係における親密さやつながりが欠如していると認識したときに生じるネガティブな心理的体験だとされます。ここにはふたつの要素があって,ひとつは「関係性が欠けていること」そしてもうひとつは「認識」です。

孤独感は,個人がほかの人の周りで過ごす時間と関係するのは間違いありません。しかし,それをどのように捉えるかということも,孤独感の高さに関連します。



主観的経験

社会のなかや集団のなかに所属したいという気持ちは,人間の普遍的な欲求のひとつです。人間同士の信頼関係,協力関係,相互依存関係は,人間全体の生存を考える上でも重要な側面です。所属したいという欲求は,性的な欲求や食欲,渇きと同じように,生存に関係する欲求です。

孤独感というのは,最初にも書きましたが,自分が望む社会的関係と,実際の社会的関係との間に不一致があると感じる程度を反映します。この「ずれ」がある上体は,動機づけとしても機能します。理想と現実とのズレが大きくなれば,そのズレを解消しようと動機づけられるものです。


孤独の影響

孤独感を抱くことは,さまざまな悪影響をもたらすとされます。うつ病,心理的ストレス,不安,そして早期の死亡などなど,多くのネガティブな結果をもたらすとされています。

主観的な孤独感という経験とは少し異なり,社会的孤立というのは,社会的ネットワークへのつながりや統合を欠く状態をさします。こちらも,人々の帰属意識や仲間意識,コミュニティの一員であるという感覚を育むことを疎外します。そしてやはり,健康関連のバイオマーカーの悪さにも関連します。そしてやはり,早期の死亡も予測するのです。

孤独と孤立

主観的な感覚である孤独感と,実際に社会的ネットワークから孤立することの両者は,関連しつつも少し異なる側面を指しています。典型的なのは「群衆のなかで孤独感を抱く」という感覚です。

孤独感の背景には社会的な孤立があるのは間違いないのですが,しかし,そこをうまく測定することは簡単ではありません。

そこで,普段の生活の中で音声を録音するというのはどうでしょうか。ひとりでいるときと,誰かといるときの時間を測定することができるかもしれません。

レコーダー

電子活性化レコーダー,EAR(Electronically Activated Recorder)という機器があります。これは,携帯する端末で,予め決められた間隔と時間に自動的に起動して,その期間の音声を記録します。この機械を使えば,その時間にひとりでいるのか,誰かと一緒にいるのかを測定することが可能になります。

もちろん完全な測定ではないのですが,孤立しているかどうかを推定することは面白いかもしれません。そして,孤独感との関連を検討すると,どうなるでしょうか。では,こちらの論文を見てみましょう(Loneliness and time alone in everyday life: A descriptive-exploratory study of subjective and objective social isolation

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