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自己愛と自尊感情は互いに連動するのか

自己愛(ナルシシズム),しかも病理ではない,一般のパーソナリティ(性格)としての研究論文が世界中に数え切れないほど存在している,というと,心理学の研究にあまり近くない人たちは驚きそうです。

Google Scholarで「narcissistic personality」をキーワードに検索すると,「約45,400件」と表示されました。やはり,なかなかの数です。すべてをチェックすることはもうできないでしょうね。

逆説的

どうして自己愛の研究がこれほど多く行われているのでしょうか。その理由のひとつは,良い面と悪い面の両方を持ち合わせた心理特性だというところにあるのではないでしょうか。

たとえば,自己愛的な傾向は自尊感情との間にプラスの関連を示すことが知られています。自尊感情の高さは多くの研究で「真意的な健康の指標」とされる「よい心理特性」です。自己愛的な傾向は明確に反社会的な傾向を示すとも限りませんし,幸福感などとの関連も複雑です。この複雑さが,この心理特性に興味を集める理由なのかもしれません。

自尊感情との関連

この両者の関係については,さまざまな見方があります。今回は,縦断的な研究の中で両者がともに変動するかどうかという観点に注目してみましょう。

自己愛的な傾向が自尊感情と関連をしたとしても,それは何らかの他の要因でそうなっているのかもしれません。同じ集団を追跡調査する縦断的な研究の中で,両者が同時に上がったり下がったりするのであれば,そこに共通要因があるはずです。

では,こちらの論文を見てみましょう(The development and correlated change of narcissism and self-esteem in adulthood)。

https://www.researchgate.net/publication/364638826_The_development_and_correlated_change_of_narcissism_and_self-esteem_in_adulthood

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