見出し画像

愛着と抑うつの関連

割引あり

アメリカ合衆国において,15歳から44歳の年齢範囲の精神的な問題の第1位は,うつ病だそうです。

悲しい気分がずっと続いたり,普段の活動への興味や喜びが失われたり,睡眠習慣が乱れたり,食の乱れ,疲労が蓄積してとれなかったり,集中力が低下したり,罪悪感やむ価値観がずっと続いたりすることが,中心的な症状です。


愛着

幼い子どもと養育者との間に形成される,情緒的な絆のことを愛着(アタッチメント)といいます。

ボウルビィの愛着理論によれば,乳幼児は不満や苦痛を抱いたときに一貫した反応と出会うことで,養育者に対する安全という感覚である愛着を発達させます。養育者との間にしっかりとした愛着を形成した乳幼児は,養育者との間の物理的または知覚的な近接性から得られる安全な感覚を維持することができます。

養育者との情緒的なつながりが失われることというのは,養育者がいなくなることも意味するのですが,子どもの苦痛のシグナルに対して無関心だったり,無反応だったり,拒絶したり過剰に反応することも含まれます。このような関係性の中にいると,適切な愛着という絆が形成されないと考えられています。

さらに,この愛着のパターンは子どもの中に内在化されて,大人にまで持ち越されるというのが愛着の理論です。大人になっても,親密な相手との間には,子どものときに形成されたパターンが出てくるという考え方です。内在化された愛着のパターンのことを,内的作業モデルと言います。

成人の愛着

大人になった後の愛着のパターンも,子どものときと同じように解釈されます。子どものときの愛着スタイルは,次のように分類されるのが一般的です。

◎安定型:信頼と安心感をもって他者との関係を営む。親密な関係を形成することができる。
◎不安型:他者からの承認や愛情を強く求める。他者の反応に敏感で,不安を抱きやすい。
◎回避型:他者との親密な関係を避ける。感情を共有したり表現したりすることに抵抗があり,独立や自立を志向する。
◎無秩序型・混乱型:他者に対する信頼感が低く,親密な関係を形成したいと思う反面,傷つくことを恐れて避ける傾向もある。

大人を対象としたアダルト・アタッチメント・インタビューというインタビュー形式の測定方法があります。そこでは,次のように分類されます。

◎自律・安定型(Secure/Autonomous):健康で安定した人間関係
◎拒否型(Dismissive):他者との親密な関係を避ける
◎混乱・未解決型(Unresolved/Disorganized):不安定で予測不可能な行動
◎巻き込まれ型(Preoccupied):過度に依存的

メタ分析

不安定で無秩序な愛着のスタイルは,抑うつ傾向につながりやすいという研究がこれまでには多そうです。しかし,研究の統合はまだ十分に行われていない面もあるようです。

そこで,メタ分析で関連を検討したらどうなるのかという疑問が浮かびます。こちらの論文を見てみましょう(Adult attachment representations and depressive symptoms: A meta-analysis)。

ここから先は

820字
この記事のみ ¥ 0〜
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?