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大学の入学者数を知っておこう

今回は日本の大学にどれくらいの人数が入学していくるのか,クイズ形式で確認してみましょう。

こういう数字を確認しておくことは,何かを考えるときのヒントになります。

では,最初の問題から。

問1:日本の大学の1学年の定員は?

A. 100万人
B. 60万人
C. 30万人

「大学全入」なんていう言葉を耳にすることがありますよね。「誰でも選ばなければ大学に入学することができる」という意味でこういった表現が使われます。

2020年の18歳人口は,だいたい110万人ちょっとくらいですので,「大学に全入できる」という話を聞くと,「大学の定員は100万人くらいあるんじゃないか」と思ってしまう人がいるようです。しかし実際には,全国の大学の定員は60万人くらいです。

答え:B. 60万人

18歳人口の半分すこしくらいの大学の定員しかない,というのが現在の状況です。ちなみに,センター試験の受験者数は約55万人です。私学でもセンター試験を利用する大学が増えてきましたし,推薦試験でも必要な場合がありますので,受験生の多くはセンター試験を受けています。

東京にいると大学進学率が高く,「みな大学には行くものでしょう」と考えている人が多そうなのですが(学生の間にも),全国で見ればまったくそういうわけではありません。

また,日本でいちばん学生数が多い日本大学の1学年の定員は1万5千人以上,2番目の早稲田大学は約1万人です。全国の定員60万人のうち1校で2%以上を占めていると考えると,その大きさが感じられるかと思います。

ただし,18歳人口はこのままいくと近い将来100万人を割り込みます。おそらくそれに合わせて大学の定員を減らすことは難しいでしょうから,入学希望者が少ない大学から淘汰されていく,という現実は起きるのは間違いありません。

問2:国立大学の1学年の定員は?

A. 30万人
B. 20万人
C. 10万人

先ほどの問題で,大学の1学年の定員が60万人だという回答を出しました。この60万人の中には,国立大学も私立大学も含まれていますよね。

では,そのうち国立大学の定員は何人でしょうか。

答え:C. 10万人

実際には,10万人を割り込んでいまして,だいたい9万5千人くらいです。多いと思いますか?少ないと思いますか?18歳人口が110万人くらいなのですから,国立大学に進学する割合を考えると10%以下です。少ないですよね。

そして,全国の公立大学の定員が3万人くらいです。残りの47〜48万人は,私立大学に進学しています。日本は,圧倒的に私立大学のボリュームが大きい国なのです。

入試をどうするか,税金をどうするかなど,大学をめぐる議論を見ていると,いったいどの大学を想定してその議論をしているのだろう?と疑問に思ってしまうことがあります。国立大学だけのことを考えていると,全体とのズレが大きくなってしまうのではないでしょうか。

問3:私立大学の受験者総数は?

A. 100万人
B. 200万人
C. 400万人

毎年,志願者数が多い私立大学が発表されますよね。たとえば,近畿大学,明治大学,法政大学,早稲田大学,日本大学に東洋大学,このあたりは受験者総数が10万人を越える数字が発表されたりします。この6大学だけで,受験者が60万人以上いるということです……あれ?おかしいですよね。センター試験の受験者数だけで55万人なのに,6つの大学だけで60万人です。

多くの受験生は,複数の私立大学を受験します。ですので,こういったニュースで発表される数字は実数ではなく,延べ人数です。一人の受験生がある大学で3つの学部・学科を受験すれば「3人」とカウントされるというわけです。

さて,文部科学省の資料によると答えは次のようになります。

答え:C.400万人

受験生全体が60万人くらい(全入ですからね)とすると,平均して6〜7つの私学を受験していることになります。ただし,最近では1回の試験で複数の学部・学科を併願するシステムをもつ大学も多くなっています(私の大学にはないのですけどね)。ですので,これは実際に試験を受けた回数ではなく,合否の判定を受けている回数ということになります。

問4:AO入試で入学する人数は?

A. 18万人
B. 12万人
C. 6万人

全国の大学に「AO入試(アドミッション・オフィス入試)」という入試の制度があります。たまに話題になりますよね。選抜の仕方はさまざまなのですが,書類だけというケースもありますし,面接も課して普通の推薦入試とあまり変わらないケースもありますし,実際に何かの作業をさせたり授業を受けたりしながら選抜をするケースもあります。

この制度で入学する学生は,1年間で何人くらいいるのでしょうか。

答え:C. 6万人

このうち,国立大学が4000人くらい,残りが私立大学です。どうでしょうか,割合は多いと思いますか?少ないと思いますか?

よく話題になる入試制度ですから,もっと多いと予想していた人もいるのではないでしょうか。

問5:一般入試(学力試験)で入学する人数は?

A. 約40万人
B. 約30万人
C. 約20万人

大学入試と言えば,学力試験を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。最初の問題の答えで示したように,日本の1学年の大学全体の定員は60万人です。

そのうち,学力試験を受験して入学する人数はどれくらいなのでしょうか。

答え:B. 約30万人

もう少し正しくは,約32万から33万人です。大学全体の定員の約半分が,一般入試と区分される学力試験での入学になっています。ということは,残りの半分はAO入試や推薦試験,その他の入試制度で入学してくるというわけです。

そしてここでも,国立大学と私立大学の違いが大きく存在します。

国公立大学では,13万人中10万5千人は,学力試験を経て入学します。一方で私立大学では,約48万人中約22万〜23万人が一般試験での入学になります。私立大学では,学力試験を経て入学する割合は半数以下です。そしてその人数は,国立大学の定員の倍の人数がいるということになります。

数字を知っておくと

以前も大学にまつわる数字については記事にしたことがあります。こういう数字をだいたいのところで知っておくと,そこからいろいろなことを考えていくものですので,その考えるときの基盤になるのですよね。

大まかでよいので,数字について気にしておくとよいと思います。

なお,今回紹介した数字は,文部科学省に示されていた概要の報告から得たものです。あらためて数字を見ると,勉強になりました。

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