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逮捕された経験と自殺したい気持ち

海外の犯罪系ドラマや警察ドラマを観ていると,取り調べがとてもあっさりしている印象はないでしょうか。すぐに弁護士が来て取り調べが終わってしまって警察が悔しがっているとか,弁護士のことを「邪魔だなあ」というしぐさをしながら困っているとか…そういう姿も目にすることがあると思います。

日本の刑事司法の問題点は,いくつか挙げられています。たとえば長期間拘留されるとか,弁護士が立ち会えないとか。『日本の刑事司法、何が問題? 罪認めないと勾留長期に』という記事にも,弁護士が立ち会えない問題が挙げられていました。

取り調べに弁護士の立ち会いが認められていないのは主要先進国の中では異例です。「密室」の調べでは捜査側による強引な調べや誘導がなされ、冤罪(えんざい)を招くとの指摘があります。こうした弊害を防ぐため取り調べの録音・録画が導入されていますが、その対象は一部の重大事件などに限られています。

アメリカでは

近年,アメリカで問題になることの一つに,人種(いわば肌の色)による扱いの違いです。

特に黒人たちは,普段の生活のなかでも自動車を停めたときに白人よりも敬意を払われず,警察官たちの口調や態度も黒人に対する敬意に欠けているという報告があるようです。また,白人たちに比べて黒人たちは明らかに刑事司法のターゲットとされる確率が高く,白人の2〜3倍の確率で逮捕される傾向があることも報告されているようです。

さらに,実際にはマリファナの使用率は白人と黒人で差がないにもかかわらず,黒人は白人に比べて4倍もの確率で逮捕される傾向にあることもわかっています。

逮捕されると

何らかの形で刑事司法とのかかわりをもつと,精神的な健康上,マイナスの影響をもたらすと言われています。SNSなどで警察の暴力を目にするだけでも,悲しみや怒り,恐怖などのネガティブな感情が高まるという報告もあります。

このような報告がある一方で,警察に逮捕されたり拘留されたりすることと自殺傾向との関連については,これまであまり調べられていなかったそうです。そこで,アメリカの全国的なサンプル調査のデータを用いて,自殺との関連を検討した研究が行われました。こちらの論文を見てみましょう(The association between experiencing police arrest and suicide ideation among emerging young adults: Does race matter?)

この論文の目的は,
◎警察による何らかの逮捕と自殺念慮との関連を,人種ごとに検討する
◎マリファナに関連する逮捕と自殺念慮との関連を検討する
という点にありました。

自殺念慮というのは自殺について考えることで,「人生には生きる価値がない」とか「自分の人生を終わらせたい」という自己破壊に関連する考え方のことを指します。一生涯のなかで,3人に1人は自殺の計画を立て,計画を立てた4人のうち3人が実際に試みるという統計もあるそうです。

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