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リスペクトの構造

日本語で会話をするときには,上下関係に敏感になって言葉を選んでいきます。日本語を第二外国語として用いる人でも,適切な敬語を使うことができると「日本語が自然だな」と感じます。

でも敬語は日本語だけの特徴というわけではなく,多くの国で日常生活の中でよく使われる社会的なツールです。また,基本的に他者を尊敬してリスペクトをもって接するというのは,どこの国に行っても重要なことですよね。

ところが,尊敬(リスペクト)の定義や,その中にどんな次元があるのかについては曖昧で,とても複雑なようです。


2種類の尊敬

海外の研究では,2種類の尊敬(リスペクト)を区別する傾向があるようです。

◎人間の基本的人権に由来する,無条件で平等で水平的なリスペクト
◎地位,資質,業績に基づいて特定の人々にあたえられる条件つきで階層的で垂直的なリスペクト

自分と相手の立場を考えて敬語を使い分けていくのは,どちらかというと後者にあたる使い方でしょうか。

異なる文化圏

今回紹介する研究は,ユダヤ系のイスラエル人とイスラム系のパレスチナ人という,2つの文化圏に焦点をあてて「尊敬」「敬意」「リスペクト」というものをどのように概念化しているのかを探索的に検討するものです。

この2つの文化圏は,20世紀初頭から領土をめぐって長期にわたって対立しており,この2つの文化圏を比較することで,宗教的かどうか,保守的かどうか,集団主義的かどうかなど,さまざまな観点から検討できるのではないかと期待されています。なお,一般的にイスラエルは個人主義的で,パレスチナは集団主義的な文化があると考えられているそうです。

では,こちらの論文で,どのようなリスペクトの構造が見られるのかを見てみましょう(The respect pyramid: A model of respect based on lay knowledge in two cultures)。

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