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サディズムと職場での行動

割引あり

ある心理学的概念について研究がはじまると,いくつかの研究の方向性のパターンが見られるように思います。

◎その概念を細かく分けていく研究の方向性
◎その概念を含むより広い概念を研究する方向性

この方向性が,大きく道が分かれる分かれ道です。


サディズム

ダークなパーソナリティのひとつとして,近年研究されてきている概念のひとつが,サディズムです。サディズムは,支配や快楽のために残酷で有害な行動をとる傾向です。サディズムには,残虐性を行使して楽しむことを積極的に求めることが含まれ,この傾向には比較的軽度なものから積極的で病的なものまでが含まれます。

サディズムに基づく行動がよく見られるのは,ビデオゲーム,スポーツ,職業場面などが考えられます。サディズムはまた,理由なく攻撃をする傾向,反社会的な懲罰的行動,少年非行,罪のない犠牲者を傷つけることなどにも関連するとされます。

理論

サディズムの背景にある理論として,生活史理論や社会的交換理論があります。

生活史理論は生物の生活全体の個体差や種の違いに関連します。即時的な報酬や資源の獲得に集中する速い生活史戦略と,満足と報酬を遅らせる遅い生活史戦略に関連しており,人間の生活にもこの傾向は関連すると言われています。そして,速い生活史戦略はダークなパーソナリティに関連しており,サディズムも,目先の優位性や快楽を得るために他者や集団にとってネガティブな行動をとることから,速い戦略に関連すると考えられています。

社会的交換理論では,人間関係が一連の資源交換を通じて形成されることを仮定します。通常,このような交換が行われるのは,人々がリソースを受け取ることの見返りとして互恵性の規範が背景にあると考えられます。この規範があることで,人間同士が互恵的に行動し,健全な人間関係が育まれます。しかし,ダークなパーソナリティの持ち主は,互恵性の規範を過小評価し,他者起きずつけても自分の利益を最大化する傾向があると考えられます。

職場内での特徴

このようなサディズムの特徴は,仕事の場面の中でどのように見られるでしょうか。

まず,対人的な逸脱行為です。サディズムの高い人は,組織の中での規範から外れて,一緒に働いている人に対して意図的に迷惑をかけるような行動をとりやすいと考えられます。

次に,サディズムの高さは非礼さを特徴とすると考えられます。被害者を意図的に傷つけ,無礼で,無愛想で,他者に対する敬意が欠如する傾向があると考えられます。このような態度をとることは,他者からの反感を買いやすいと考えられます。

さらに,電子メディアを通じて敵対的なメッセージを継続的に発信し,他者に危害や不快感を与えようとするネットいじめも,サディズムによく関連する特徴だと言えます。

加えて,仕事上の懲罰行為にも注目してみましょう。職場で他者を苦しめるような行為は,警告や解雇など,加害者に対する懲戒処分へとつながる可能性があります。サディスティックな従業員は人間関係の中で有害な行動をとりやすいので,なんらかの懲罰を受けている可能性も考えられます。

職場の中でのサディズムの特徴を,その他のダークな特性と比較しながら検討した研究があります。こちらの論文を見てみましょう(A systematic comparison of three sadism measures and their ability to explain workplace mistreatment over and above the dark triad)。

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