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勤勉性が裏目に出てもやはり勤勉性

ビッグ・ファイブ・パーソナリティは,人間全体のパーソナリティをおおまかに5つの次元で表現します。この枠組みは健康で通常範囲のパーソナリティを上手く表現する枠組みではあるのですが,さまざまな精神的な問題にも対応したものだとされています。

たとえば強迫性パーソナリティ障害(OCPD)は,柔軟性や効率性を犠牲にしても,秩序,完全性,精神的・対人的コントロールに過度にとらわれてしまうことを特徴とします。これらの特徴は,完全主義やワーカホリック,角に物事をあれこれ考えてしまうような傾向に関連しそうです。

そしてこれらの特徴を考えると,ビッグ・ファイブ・パーソナリティの中の勤勉性(誠実性)に関連しそうだと想像されます。勤勉性はビッグ・ファイブ・パーソナリティの中でも,「よい社会的結果」をもたらす特性として注目されるものでもあるのですよね。しかしその一方で,パーソナリティ障害にも関連するというわけです。勤勉性にとっては「ダークな側面」と言うことができるでしょうか。


不適応な勤勉性

実際に,勤勉性の不適応的な側面に注目して測定を試みた心理尺度があるようです。5因子強迫性目録(FFOCI)と呼ばれる尺度のようです。この目録は12のファセット(下位側面)で構成されていて,伝統的に以前から指摘されている強迫性パーソナリティ障害の内容の範囲をカバーしているそうです。こういう尺度があるのですね。

この尺度にはたとえば,達成や努力に対応するワーカホリズム,熟慮をしすぎてしまう考え込み・熟慮,柔軟な対応を欠いた状態である柔軟性の欠如といった下位尺度が含まれています。

関連するもの

5因子強迫性目録(FFOCI)は何に関連していくのでしょうか。その特徴を明確にすることを試みた研究があります。こちらの論文を見てみましょう(Maladaptive conscientiousness is still conscientiousness)。

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