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高齢者の陸上競技記録からわかること

日本マスターズ陸上競技連合という団体があります。

陸上競技の大会なども行われているのですが,5歳刻みで年齢範囲が示されていて,そのなかで競技が行われるのが特徴です。


世界記録

どのような競技でも世界で一番の記録,というのは興味深いものです。世界記録というのは,大きなサンプルを対象にして明確な基準が定められており,十分な選抜が行われる場合には,より大きな意味を持ちます。それは,人類の到達点と言えるものであるのかもしれません。

マスターズに出場する選手たちは,州に何時間ものトレーニングを行い,それを何十年にもわたって続けていきます。マスターズ陸上のような,高齢の人々が参加してもっともよい記録が蓄積していくというシステムは,ある意味で人間のもっともよい身体面での加齢モデルであるとも言うことができます。

そういう点で,マスターズ陸上の選手たちの記録データは,私たちがどのように年齢を重ねていくのかという,非常に重要な示唆をあたえるのではないでしょうか。

パフォーマンス

数十秒以内の短時間で使用される筋力と,長時間持続する持久力で使用される筋力は異なると言われています。前者は無酸素運動,後者は有酸素運動と言われたりもしますよね。

高齢者になっていくことを考えると,この2つの筋力の衰えは異なるパターンを示すことが予想されます。短距離走のタイムは大きく落ち込んでも,長距離走のタイムはそれほど落ち込まない,といったことが観察されそうにも思います。

マスターズ陸上競技の記録から,高齢者のランニングのパフォーマンスの特徴を明らかにすることは,加齢に伴う運動能力の変化を検討する上でも面白そうです。では,こちらの論文で結果を確認してみましょう(Sprint and endurance power and ageing: an analysis of master athletic world records)。

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