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ダークな性格の人は課題を先に延ばしがち

近年,進化的な観点から人間のパーソナリティを論じることが増えてきています。特に関心を集めているのは,生活史理論(life history theory)と呼ばれる枠組みを利用して,パーソナリティ特性の型性や個人差,集団差を考えていくことです。

生活史理論では,生活や人生の中でどのような場面に自分自身がもつ資源を投入するかに注目します。大きく分けて,短期的な戦略(r戦略)と長期的な戦略(K戦略)と呼ばれる傾向があると仮定されています。

r戦略・短期的戦略
◎性成熟の速度が速い
◎生涯パートナー数が多い
◎子どもの数が多い
◎養育への投資が少ない

K戦略・長期的戦略
◎性成熟の速度が遅い
◎生涯パートナー数が少ない
◎子どもの数が少ない
◎養育への投資が多い

速い戦略と遅い戦略

短期的戦略を採用する個体は,将来の適応を犠牲にしても,現在の適応を優先する傾向があります。一方で,長期的な戦略を採用する個体は,今よりも将来の適応に最適化しようとする傾向を示します。

そして短期的な戦略は,ダークなパーソナリティと関連することも報告されています。

◎自己愛(ナルシシズム):優越感,自己充足感,誇大性,共感の欠如
◎マキャベリアニズム:戦略亭に他の人を操作し,他者を信用せず皮肉屋
◎サイコパシー:冷淡でリスクをいとわず他者の痛みを気にしない
◎サディズム:他者の身体的・心理的苦痛を観察することを楽しむ傾向

ダーク・トライアドにサディズムが加わった組み合わせが,ダーク・テトラッドです。


先延ばし

短期的な戦略と長期的な戦略に関連しそうな心理特性がもう一つあります。「先延ばし(procrastination)」です。

先延ばしは,より即時的な利益をもたらす課題を優先して,特定の課題を遅らせることです。〆切のあるレポート課題に取り組まなくてはいけないのに,なかなか取り組むことをせず,ついついYouTubeでアイドルの動画をチェックしてしまう,というのも先延ばし行動の一例です。

課題を先延ばすことは,しばしば時間管理がうまく行かなくなること,〆切に遅れてしまうこと,成果の質が低下するといった,ネガティブな結果をもたらします。そして,時間的に先の方にある課題よりも今目の前にある欲求や報酬を手にする傾向を意味しますので,生活史理論では短期的戦略に関連しそうです。

ダークなパーソナリティと先延ばし

そして,三段論法のようではありますが……ダークなパーソナリティと先延ばしも,何らかの関連があるかもしれませんね。

では実際に関連を検討した研究を見てみましょうか。こちらの論文です(Time wasters? Active procrastination and the Dark Tetrad)。

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