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面白い研究につながるリサーチクエスチョン

面白い研究をおこなうには,どうしたらよいのでしょうか。今回も『面白くて刺激的な論文のためのリサーチ・クエスチョンの作り方と育て方: 論文刊行ゲームを超えて』から,そのヒントを探っていきましょう。


ギャップ・スポッティング

これまでの記事で,リサーチクエスチョンを立てるときによく使われる,ギャップ・スポッティングについて説明しました。これは,先行研究の穴を埋める研究計画の立て方です。

先行研究ではここが押さえられていない,この研究領域は誰も踏み込んでいない,この方法がこの研究では使われていない,この理論をこっちにもってきたらうまく行くのでは……こういうリサーチクエスチョンの立て方は,心理学でもよくおこなわれています。

そして,こういうリサーチクエスチョンを立てると,「研究がどんどん進む」のです。やりやすいのです。論文も書きやすい。そして,研究を大量生産しやすい。

研究者にとって,論文数は評価の基本です。自分の名前が掲載された論文が少ない研究者よりは,多い研究者の方が明らかに高く評価される傾向があります。ですから,すぐに論文化につながるリサーチクエスチョンを立てて,効率的に研究を進めていくことは,研究者にとって大きなメリットがあるのです。

面白いか

ただし,ギャップ・スポッティングに基づいたリサーチクエスチョンによって進められた研究というのは,必ずしも面白いとは限りません。

先行研究の「穴を突く」という点では,「なるほど」と思わされるのですが,研究の流れを大きく変えるような革新的な研究になるかというと,そうではない予感がします。これまでの研究に何かが追加されるような研究になることが多いのではないでしょうか。

もちろん,それはそれで価値があるのですけどね。研究に取り組み始めたばかりの学生さんたちであれば,まずは学んでほしいリサーチクエスチョンの立て方です。ただし,ずっとそれをしていると「面白くない」という感覚にも陥ってしまいそうです。

ただ,研究者が置かれた環境がそれを強いているという背景は間違いなくあるのです。誰でも,効率的に研究成果を報告できるならその方法をとろうとするものです。それで研究者としての就職も左右されてしまうのですから。研究者になって研究への意欲がなくなってしまうパターンでもあるのかもしれません。

ギャップ・スポッティングを越える

研究者が置かれた状況は,致し方がありません。世界じゅうで研究者は競争をしているのです。しかしその中で,独創的で面白い研究をしていくことに対して,しっかり評価をしていくことは重要です。

研究者にとっては,自分が著者に名を連ねている論文の数は,評価のポイントになります。しかし,論文数だけを追い求めることに対しては,常に疑問を持っておくことも重要です。

もちろん,研究を進める上で,ギャップ・スポッティングの方法は基本で,研究も行いやすいことは間違いありません。研究を学び始めるときには,まずギャップ・スポッティングの方法をしっかり学んでおきたいものです。しかし,研究者となっていくときには,それを越えていくことも必要ではないでしょうか。

問題を探す

これまで当たり前に行われてきた前提に疑問を持つこと,研究の背景にある世界観について考えること,現象を捉える視点そのものをとらえ直そうとすること,多くの研究者たちが当たり前に行う決まりごとに疑問を抱くこと,使われている言葉そのものに疑問を抱くこと……などです。こういったことにアプローチしていくことは,これまでの研究の流れを大きく変革させるきっかけになりえます。

心理学の研究のなかでも,ときにこういったことにアプローチする研究が登場してきます。やはり革新的な研究が,研究の流れを変えていくのです。

でも,ここには明確なルールや法則はないのですよね。どこかでたどり着くものかもしれませんし,目指してもできるようなものでもないかもしれません。研究者として最初からこれを求めてしまうと,研究の難易度が高くて学位論文や就職に失敗してしまうかもしれません(制度上,効率化が求められる傾向にあります)。

常に面白い研究とは何かを頭に置きながら,視野を広くもちつつ試行錯誤をしていくことが大切かもしれません(ふんわりした結論ですが……)。

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