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親子関係は子どもの幸福に影響するか

親子関係は,時代によって「絶対的に大切だ」とされる時期と,「あまり重要ではない」とされる時期とを揺れ動いてきたように思います。

精神分析学的な理論が流行するなかでは,「親の養育が絶対的に子どもの精神的健康に影響する」という考え方が当然のように受け入れられてきました。

近年では,行動遺伝学によるふたごの研究のなかで,「共有環境(家庭内環境)は,子どものパーソナリティにほとんど影響を及ぼさない」という研究知見が見出されています。そして,この話が世の中に広まっていくなかで,「だったら家庭環境はあまり意味がないのか」と曲解した考え方が広まる傾向も見られます。


親子関係は重要

でも,親子関係が重要なのは,いつの時代でも間違いありません。それを絶対視することも,軽視することも誤りなのです。

では,幸福感に対して親子関係はどのように影響を及ぼすと言えるのでしょうか。長期縦断調査から,子どもの頃の親のケアと統制に注目して,その後の子どもたちの幸福度に影響する様子を検討した研究があります。こちらの論文を見てみましょう(Parent–child relationships and offspring’s positive mental wellbeing from adolescence to early older age)。

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