開放性がイノベーションに関連する
特にアメリカ合衆国のような広い土地がある国では,地域によって大きな会社が新しく置きやすい場所と,そうではない場所とに分かれてしまう傾向があるようです。新しいイノベーションが起きやすい場所と,そうではない場所です。
『年収は「住むところ」で決まる ─ 雇用とイノベーションの都市経済学』という本の中でもこの問題は扱われていました。そもそも,大学がある場所にイノベーションが起きやすく,またひとつのイノベーションが起きると,そこで関連企業も数多く立ち上がってくるので,その地域全体が活性化することにつながっていきます。20年も経てば,その地域と他の地域との間に大きな差が生まれてくることになるのです。
特許数
イノベーションの地域差は,特許の数にも表れてきます。たとえばアメリカ合衆国では,2001年から2010年の間で,もっとも革新的とされる5つの都市(サンフランシスコ,シリコンバレーを含むサンノゼ,ニューヨーク,ロサンゼルス,ボストン)は,人口の14%を占める一方で,アメリカ合衆国全体の特許の33%を生み出しているそうです。
単に特許だけでなく,ブレイクスルーを生み出すような特許となると,さらに地域が限られてくるそうです。こういった様子は,本当に研究の世界でも同じですよね。
イノベーションの種類
細かいイノベーションに注目すると,増加的なイノベーションと,ブレイクスルー的なイノベーションに分けることができるそうです。
増加的なイノベーションは,新しい技術を発明するのではなく,既存の技術を改良する探索的なプロセスから生まれるものです。一方で,ブレイクスルー的なイノベーションは,離れた知識の領域の間にある障壁を埋めようとするプロセスから生じると言われています。
この両社を比較すると,ブレークスルー的なイノベーションは,その地域だけでなく他の地域から情報や人が流れ込んできて相互作用を起こすような要素が必要ではないかと想像されます。そして,パーソナリティの要素としては開放性が,このようなイノベーションへとつながる情報処理や分け隔てのない交流へとつながるのではないかということも想像されます。
イノベーションの地域差
アメリカ合衆国の特許商標庁の特許データを用いると,増加的なイノベーションとブレークスルー的なイノベーション,そしてそれらがどの地域で申請されたかを調べることができます。
そしてその地域データと,オンライン調査から得られた個人のパーソナリティ得点の地域差との関連を検討することで,イノベーションに関連する性格特性を検討しようと試みる研究があります。
特に開放性のパーソナリティ特性に注目して検討が行われているのですが,この論文を見てみましょう(Psychological Openness and the Emergence of Breakthrough vs. Incremental Innovations: A Regional Perspective)。
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