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脳の手術をすると性格は変わるのか

記事のタイトルの通りなのですが,「脳の手術をすると性格は変わるのか」という疑問は,多くの人が抱くのではないでしょうか。

今回は,この問題について検討した研究を紹介してみたいと思います。果たして,どうなるでしょうか。


変わるとは

さて,実際に研究を行うためには,非常に面倒なことではあるのですが,いくつかのことについて考えなければいけません。

まず性格とは何か,です。今回紹介する研究では,ビッグ・ファイブ・パーソナリティが用いられています。これは性格を「タイプ」に分けるものではなく,「特性」として捉えます。たとえて言えば,学力テストの国語,数学,英語,理科,社会という科目の得点のようなものです。学力テストで5教科それぞれの得点が示されるように,ビッグ・ファイブ・パーソナリティも外向性,神経症傾向,開放性,協調性,勤勉性の5つそれぞれの「得点」が示されます。

次に「変わる」とは何を指すのかです。変化の表し方には,いくつかのものがあります。その中でも今回は,平均値の変化に注目して検討を行います。つまり,手術の前の患者さんたちのビッグ・ファイブ・パーソナリティそれぞれの平均値に対して,手術後の平均値が上昇したり下降したりする様子を表すということです。

あくまでも平均値ですので,全員の平均値が同じように一斉に上下するわけではありません。したがって,結果が示されても,誰にでも当てはまるわけではなく,「そのような確率的な傾向が見られる」と解釈するのがよいでしょう。

後天性脳損傷(ABI)

というわけで,後天性脳損傷(ABI)と呼ばれる脳の損傷に伴う手術の前後で,本当にパーソナリティ特性が変わるものなのかどうか,この論文で確認してみましょう(Evidence of Big-Five personality changes following acquired brain injury from a prospective longitudinal investigation)。

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