「特性」とは何か
心理学ではパーソナリティ「特性」とか認知「特性」という言葉が使われます。この「特性」とは何を意味するのでしょうか。今回は「特性」について見ていきましょう。
定義
「特性」というのは「trait」の日本語訳です。特性は,思考や感情,行動のパターンを記述したり測定したりするための「基本単位」とされたり「一側面」とされたりする意味を持ちます。加えて,状況や時間を超えてある程度の一貫性と永続性を仮定する概念でもあります。単に行動の一貫したパターンというだけでなく,もう少し広い意味を持つように思われます。
まさにパーソナリティ(性格)という概念が,「特性」の代表的なものです。パーソナリティの定義自体が,個人の思考・感情・行動のパターンを意味していて,状況や時間を超えて比較的一貫することが仮定されるからです。
特性は,個々人の行動・感情・経験的特徴を区別し,順序をつけ,名づける方法であると考えられることもあります。特性を考えることで,多くの行動パターンや思考パターンなどに名前をつけ,その名前がつけられた概念を測定することで個々人を序列化し,個人差を表現することを可能にします。
歴史
紀元前の古代ギリシャで,ヒポクラテスが四体液説を提唱し,その数百年後にガレノスが四気質説に発展させます。四気質説は「類型」として捉えられるのですが,実はそれぞれの気質は「体液のレベル」にも関連しているので併存しうるとも考えられるのですよね。瀉血や嘔吐治療などで「体液のバランスをととのえる」と考えるということは,それぞれの体液には「量」があって,それを調整するという考え方が背景にあることがわかります。ということは,4つの体液はそれぞれが特性のような考え方であったとも捉えることが可能です。
20世紀初頭,精神分析学者ユングは外向型—内向型という性格類型を考えます。これも「外向型か内向型か」という「類型」として捉えられがちなのですが,日本では「向性検査」という検査が開発されたり,海外でも外向性のレベルを測定する尺度が開発されたりしています。これは「外向性」というレベルを程度で測定するものですので,「特性」として捉えていたということも意味します。
イギリスの学者ゴルトンは,特性の個人差が異なる文化の言語の中に見られることを論じて,辞書から単語を抜き出すという試みを行います。その後,アメリカの心理学者オルポートは,特性がパーソナリティの基本単位であることを示します。そこから,「特性」という考え方が定着していくことになったのでした。
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