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投資運用が得意だと思っていますか?

ダニング=クルーガー効果という言葉があります。これは,自分自身の能力の低さを自覚するメタ認知能力(自分自身を客観的に見る力)が欠けているために,能力が高い人に比べて実際の能力を過大評価してしまうという現象のことです。

たいてい,何かの能力を測定することがこの現象の測定では用いられます。そして,能力が高い人と低い人を分類します。加えて,自分自身ではどのような能力が発揮されるかを予想して,実際の成績と予想した成績をひとつの図の上に表します。能力の低い人は主観的に予想された結果よりも実際の結果の方が低いという結果が得られると,ダニング=クルーガー効果が見られたとされるというわけです。

批判

一方で,ダニング=クルーガー効果に対する批判もあります。

たとえば,平均以上効果と平均への回帰という2つの効果が混ざり合って生じているのではないかという批判です。

◎平均以上効果:さまざまな能力や特性について,自分が平均以上であると考える傾向。レイク・ウォビゴン効果とも呼ばれます。
◎平均への回帰:データに偏りがあっても,次第に平均へと近づいていく現象。

平均以上効果を考えると,一般に人々は自分は平均よりも上であると認識しやすいので,たとえ実際に能力が低くても高めに自己評価をしてしまうことがある,ということへとつながります。また,客観的な能力検査の結果も,主観的な能力の評価とは関連しますので,両者が互いの平均値の方向に向かって回帰していくという現象が観察されるかもしれません。

さて,どうしたらよいのでしょうか。より現実の社会のなかで,この効果を検討できないでしょうか。

金融リテラシー

金融リテラシーとは,生涯にわたる経済的な幸福に向けて,金融資産を効果的に管理し活用するための知識・技術・能力,といったように定義されるものです。知識や技術や能力といったように,必ずしも部分的なものではないのですが,金融リテラシーが高いことは,総合的に金融資産を上手く管理していくことが期待されます。

たとえば,インフレやデフレになったときに貨幣価値がどうなるかという理解や,複利による資産の増加に関する理解,分散投資のメリットなどについて理解している程度が測定に用いられるようです。

ちなみに,「複利」「実質利回り(インフレ)」「リスク分散」「住宅ローン金利」「債券価格」についての理解を「ビッグ・ファイブ」とも言うようです。これらがちゃんと理解できているか,問題への正答は客観的な指標と言えるでしょうか。一方で,自分が金融リテラシーがどれくらいあるかを回答するものは,主観的な金融リテラシーの程度と言えるかもしれませんね。

ということは,これらの両者を比較することで,ダニング=クルーガー効果が検討できるかもしれません。というわけで,実際に検討した研究を見てみましょう。この論文です(The association between objective and subjective financial literacy: Failure to observe the Dunning-Kruger effect)。

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