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状態のマインドフルネスと特性のマインドフルネスの関係

マインドフルネスは,いまこの瞬間に判断することなく意識を向けることを指します。これは,その場その場で瞬間的に行うことであって,行動や技術や態度といったものに近いかもしれません。

一方でマインドフルネスは,時間と場所を越えてある程度安定している心理特性として捉えられることもあります。

状態と特性

マインドフルネスを,その場その場の瞬間や状況によって変動する「状態」としてとらえる立場と,比較的安定していて時間や場所を越えてその特徴が続くという「特性」と考える立場とでは,何が違うのでしょうか。

ひとつの考え方は,解像度のようなものです。その場その場で考えれば,人々はある特徴を持ちつつもその場にあわせて行動しています。各個別の行動を見ながらも,目を細めるようにあるいは解像度を粗くしていくように見ていきます。すると,おおよそ人々はある特徴を中心に,そこからばらつくように個別の行動を行っていく様子が見えてくるというわけです。なんとなくイメージはつかめるでしょうか……。

全体特性理論

全体特性理論(Whole Trait Theory; WTT)は,特性を記述的側面と説明的側面の2側面で描きます。

特性の記述的な側面というのは,その人がさまざまな文脈で表面に出す状態の全体的な集合のことです。これは,それぞれの人に固有の「確率密度分布」として表現されます。

特性の説明的な側面は,それぞれの状態を説明する社会認知的なメカニズム(目標設定の仕方など)で構成されます。

全体特性理論では,状態の個人内変動が特性の構成要素となり,個々人で安定した個人差は確率密度分布のパラメータ(平均値や標準偏差など)で表現されます。たとえば,私たちは場面場面で外向的な振る舞いや内向的な振る舞いをしていきます。しかし,ある場面における外向的な程度というのは,個々人で異なっています。ある個人に注目して,横軸にあらゆる場面(外向性が求められる程度で並べる),縦軸に外向性の程度を取ると,ある場面をピークに外向性の程度の得点分布を描くことができます。この得点分布が,ある個人の「外向性のありかた」を表すというわけです。そしてこの外向性のあり方は,個々人で異なるのです。

この考え方をマインドフルネスに適用したらどうなるのか,というのが,今回紹介する論文です。マインドフルネスは状態と特性と両方の意味を持ちますので,この全体特性理論の考え方がぴったりではないでしょうか。では,こちらの論文を見てみましょう(Using Whole Trait Theory to unite trait and state mindfulness)。

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