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性格は正規分布の形状をとるのか

ほとんどのパーソナリティ特性は,多少の歪みはあれど,左右対称の釣り鐘型(ベル型)の得点分布を描く傾向があります。ピークはたいていひとつで,平均値は中央値に近く,多くの人は平均値や中央値の近くに集まり,高い得点と低い得点の極端な値をとる人はとても少ないという現象が生じることになります。

ベル型の分布は正規分布であるとは限りません。正規分布はベル型の形状をとる分布のひとつの形にすぎないのです。ロジスティック分布やt分布も釣り鐘型をとりますが,正規分布よりも両端が分厚かったり,より平坦な形状をとったりします。

なぜベル型になるのか

ベル型の分布を作り出す方法をイメージすると,どうしてパーソナリティ特性がベル型の分布になるのかが理解しやすくなります。

コインを1枚用意して表が出るかどうかを見ます。確率は2分の1です。次に,コインを10枚用意して投げて,何枚表が出るかを数えます。もちろん平均は5枚なのですが,これを何度も繰り返して表の枚数を数えていくと,5枚を中心にベル型の分布を摂るようになります。さらに枚数を増やせば,ますますきれいな左右対称のベル型の分布となり,正規分布に近づいていきます。

ベル型の分布は,ひとつひとつは効果が小さな多くの独立した(互いに影響を及ぼしあわない)影響が合わさったときに生じる分布なのです。パーソナリティ特性に関して言えば,遺伝も環境もそうです。遺伝についても,ひとつのパーソナリティ特性に影響する遺伝子はとても多数あって,よってたかって影響を及ぼすというイメージです。環境についても,多くの環境要因がひとつのパーソナリティ特性に影響していて,よってたかって高めたり低めたりするような影響を及ぼします。

そして結果的に,ベル型の分布になっていくという考え方です。

歪むとき

得点分布が左右に歪むケースや,二峰性の分布になる場合があります。

たとえば病理を測定するような場合には,多くの人は病理を経験しているわけではないのですから,平均値は低い方に寄っていきます。特定の現象(犯罪や恋愛など)でも,得点が左右対称になるということはあまりないかもしれません。パーソナリティ特性の場合でも,完全に左右対称になるかというと,そこまで厳密に求めるのは難しいかもしれません。

たとえ得点分布が左右に歪んだとしても,そこでちゃんと人々が判別されることのほうが意味がある,ということは多いのではないでしょうか。

二峰性の分布もたまに見られます。これは個人的な経験だと,「ない」か「ある」かが明確な質問項目で見られることがありました。ずいぶん昔に指導していた学生が作った質問項目ですが,「毎日鏡を携帯している」という質問項目が典型的に二峰性の分布を示していました。たとえ5段階で回答を得たとしても,毎日持っているか,もっていないか,どちらかに集中するのは想像できます。これはこれで,何かの測定にとっては意味がある質問項目なのかもしれません。

正規分布がいいのか

ピアソンの積率相関係数やt検定のようなパラメトリックな検定は,正規分布を前提としますので,パーソナリティ特性がベル型の分布になるということが,分析にとっては好都合です。しかし一方で,多少の分布の逸脱があっても,結果はそんなに決定的に変動するわけでもありません。

むしろ,測定しようとしている現象がそもそも正規分布に近くなるのかどうなのか,しっかり考えて測定をしていくことが重要ではないでしょうか。

「なんでも正規分布になるのが当然」とは考えない方がいいかもしれないですね。

今回の記事は,こちらを参考にしました(Bell-Shaped Distribution of Personality Traits)。

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