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孫ができると性格は変わるのか

子どもが大きくなって大学生くらいになってくると,「次はお孫さんですね」なんて言われたりするものです。もう「おじいちゃん」「おばあちゃん」になってしまうのか……とちょっと愕然としてしまうわけですが,孫の誕生というのは,人生の中でも大きなライフイベントです。


祖父母の役割

現代の社会では,以前と比べて祖父母の役割というのも変化しているのですが,それでも重要なものだと考えられています。

それぞれの発達の時期における重要なライフイベントや問題のことを発達課題と呼ぶことがあります。孫ができるというのは,中年期が終わり老年期が始まるという頃の重要な発達課題ともされます。孫ができるかどうかというのは,祖父母になる本人にはなかなかコントロールできるものではありません。このように,自分でコントロールできない要因で人生が次の段階に移行していくことを,カウンター・トランジションと呼ぶそうです。

また祖父母が子どもと良好な関係を維持していると,祖父母はポジティブで良好な状態になるという研究もあるようです。

ちょうど孫が生まれるくらいの時期というのは,常勤職を退職し,年金生活に入り(もちろん年齢や社会的な制度の変化によって変わりますが),認知的・身体的な衰えが生じてくるなど,さまざまな生活の中の変化を体験する時期と重なってきます。このような環境の変化に,祖父母になる人々のパーソナリティ発達も影響を受けると考えられます。

相反する研究結果

祖父母になることとビッグ・ファイブ・パーソナリティの変化についての研究はほとんどないのですが,主観的幸福感についての研究はいくつかあるようです。ところが,研究によって相反する結果が見出されています。

◎孫の誕生は生活の質や生活満足度が向上するが,女性だけである。
◎孫の誕生によって生活満足度が向上するのは,娘にはじめて子どもが生まれた祖母だけである。
◎初めて祖父母になることは,生活満足度の向上に影響せず,抑うつ傾向の減少にわずかだけ影響する。

孫の誕生によって,部分的にポジティブな影響が生じるという研究結果と,ほとんど影響しないという結果があるようです。

性格は変化するのか

では実際に,孫が生まれることによって,ビッグ・ファイブ・パーソナリティに変化は生じるのでしょうか。縦断的な調査によって見出された結果を報告している研究があります。こちらの論文を見てみましょう(The transition to grandparenthood: No consistent evidence for change in the Big Five personality traits and life satisfaction)。

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