世界中の文化のタイトさとルーズさ
世界中の国や地域の文化をどのように表現すべきなのかという問題は,非常に長い時間にわたって,多くの研究者や人々の関心を集めてきました。
紀元前に古代ギリシャ時代の歴史学者ヘロドトスは,旅先で観察したさまざまな文化的慣習を記録しています。その時代から,自分が住んでいる地域と他の地域との違いに関心が向けられていたのです。
タイトかルーズか
近年よく研究されてきた文化の枠組みに,タイトな文化かルーズな文化かという見方があります。これは,規範が強くて規範から逸脱する行動に対して寛容度が低く厳しい態度をとるタイトな国と,規範が弱く逸脱した行動に対して寛容なルーズな国があるという,文化の見方です。
タイトな文化とルーズな文化は,近代化された社会の中だけで見られるものではありません。伝統社会の中でも,タイトな集団とルーズな集団があるようです。
タイトな社会はルーズな社会に比べて人口密度が高く,狩猟採集よりも農作物への依存度が高い傾向が見られています。強い規範をもつ農耕社会では厳格な子育てが行われる傾向が強いことも見られるようです。
逸脱行動とタイトさ
文化的なタイトさ,ルーズさは質問紙尺度で測定されるのですが,それが特定の社会の中での逸脱行動に対する寛容さにどれくらい関連するのかを検討することは重要です。タイトな文化の背景には,何らかの脅威が生じやすい可能性があります。混乱をもたらすような脅威は,資源の不足をもたらします。自然災害,他国からの脅威,病気の蔓延など,さまざまな要因が考えられます。それは,社会全体の成り立ちや政治的な体制,刑事司法制度などにも反映すると考えられます。
今回紹介する論文では,多くの国を対象として比較しながらこの点を検討しています(Differences Between Tight and Loose Cultures: A 33-Nation Study)。
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