帰省
娘(25)が週末に帰ってきた。
帰ってきたといっても都内にいるのだから、そう遠いわけではない。
一人暮らしをすると家を出て、もう1年以上になるか。
聞けば毎日弁当をこしらえ、実家では起こすまで意地でも起きてこなかったのにきちんとアラームで起きているという。
掃除や洗濯もルーティンの中に組み込まれていて、今のところ心配ごとは杞憂に終わるようだ。
帰省というのか微妙だと思うが娘にとっては「実家」であることには違いないので間違いではないだろう。
ぼくは両親がすでに他界しているので「実家」と呼べる場所がない。つまりは「帰省」するところがないのだ。
長く両親と同じ街で暮らしていたので帰省らしいことはピンと来なかったが、東京に越して来てから相次いで両親が亡くなってしまい、帰省らしいことは一度しかできなかったからなのか、どこか憧れるような気持ちがある。
夏休みや正月には電車や車の混み具合にぶつくさ言いながらも孫を連れて帰りたい。
帰る場所があるのはなんとも心強いものだ。
娘は帰ってくると、そりゃもうびっくりするくらい何もしない。
出したら出しっぱなし。食器のひとつもさげない。
お前は家だと本当になにもしないね、と言うと、なにもしない為に帰ってきているのだから当たり前だと宣った。
今回の帰省のおり、ぼくは娘とテレビを眺めているときにうたた寝をした。
目を覚ますと娘は自室に行っていて、テレビは消してあり、ぼくの身体にはタオルケットがかかっていた。
なるほどね、と思う。
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