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義母の弁当

ししゃも、ソーセージとキャベツのクミンシード炒め、たまご焼き

何という話ではない。
家人と話していて、ああ、懐かしいと思った。
ぼくと家人は結婚前、しばらく同棲の真似事のような事をしていた。
2人とも若かったし、仕事も忙しく自炊をしている時間も面倒をこなすつもりもなかったので、アパートの近くに住む家人のお母さんに弁当をお願いする事もあった。
この家人のお母さんが作る弁当が実に旨かったのだ。
ぼくの母は、こんな事を言っては何なのだけど、あまり料理が好きでも得意でもなかった。
もちろんまずいと思った事など一度もないのだけど、あまり凝った事もしないし味付けも極当たり前だ。
しかしそのぶん印象が薄いと言うか、まずくもないけど驚くほど旨くもない。
そんな感じだった。
もちろんそれでまったくいいわけだが、中学・高校と弁当を持たせてもらっていたのだけど、とりわけ印象に残る弁当も思い浮かばない。

あ、いや、一度高校の頃だったか、弁当のおかずが困るとこぼしていた母に「なんでもいいんだよ。なんなら焼きそばだけでもいいよ?」と言ったら、本当に一面の焼きそばが敷き詰められた弁当だったことがある。
あれはなかなかの破壊力だった。

これは過日の家人に作った弁当

ところが家人のお母さんの作る弁当は(こりゃあ金が取れるよ)と家人に言った事があるくらい旨かった。
家人曰く、その料理上手のお陰で、自分が料理をする必要性も感じなかったと。
まあ、それは言い訳だろう。

ふと、にんにくや生姜がたっぷりと効いた色とりどり、ガッツリ量のある家人のお母さんの弁当を久し振りに食ってみたい気になったのである。
ぼくも家人も存命の親は義母だけになってしまった。

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