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むさしの写真帖

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「写真っていうのはねぇ。いい被写体が来たっ、て思ってからカメラ向けたらもう遅いんですよ。その場の空気に自分が溶け込めば、二、三秒前に来るのがわかるんですよ。その二、三秒のあいだに… もっと読む
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#写真のたのしみ方

むさしの写真帖

むさしの写真帖

古いデジカメについて書いています。
ただしこれらの記事は2018年前後のものであるので、カメラのほとんどは手許にないのをご承知おきください。

追記: ネタが尽きたので写真、カメラにまつわること。またアラカンおじさんの日常について書いたりします。(2023年霜月朔日)

鮒おじさん

鮒おじさん

"小学校4年生の夏休みのことで、今でもよく覚えてる。

川と古墳の堀をつないでる細い用水路があって、そこで一人で鮒釣りをしてたんだ。
3時頃から始めたんだけど、いつになくたくさん釣れるので面白くてやめられなくなった。

だんだんあたりが薄暗くなってきて、日の長い時期なので7時近かったと思う。

そろそろ帰らないと怒られるな、もう一匹だけ釣ったらやめようと思っていたら、ガサガサと藪を踏み分ける音がし

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どどいつ

どどいつ

唐傘の 骨の数ほど 男はあれど 広げてさすのは 主ひとり

「かんてら」

「かんてら」

名古屋駅の真ん前に「大名古屋ビルヂング」というのがあるが、今建ってるのは2016年に建て変わった新しいビルで、元々はぼくと同い年の古いビルだった。
ビルヂングという呼称は三菱地所のビルにつけられたもので、東京・丸の内の丸ビルなんかも昔はビルヂングだった。
名古屋のそれはどういうわけだか呼称は刷新されず、このまま残っている。

さて、前置きが長くなったが、ぼくの大名古屋ビルヂングの記憶となると、これ

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Life size

Life size

フィルムの頃のカメラは標準レンズは50mmであった。
これはズームレンズにまともなのがなかった為と「見たままが撮れる」という50mmレンズの特性がカメラを初めて使う人にも扱いやすいという事からだろう。
決して間違いではないが勘違いしやすいのが、この「見たままが撮れる」という表現だ。

水平角度が200度と言えば、カメラ・レンズで言えば超々広角になり、大体は「魚眼レンズ」の世界だ。
人間の情報受容能

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桜桃忌

桜桃忌

6月19日が桜桃忌である。

かつてはとても好きな作家であった。
しかし為人を知るにつけ、心から嫌悪する男に成り下がった。
先日行った近所の鰻屋の「若松屋」は三鷹時代に太宰が通った店とのことだが、あまり深く触れなかったのは、そのためだ。

デカダンのみならず、一連のユーモアあふれる作品群を読んで、余計に思う。

どう考えたって神経症の金持ちのボンボンの心中ごっこに付き合わされた女性が気の毒である。

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赤羽橋へ行った帰りに笄橋を経由する

赤羽橋へ行った帰りに笄橋を経由する

笄とはなんぞやと調べてみると、髷を結っていたころの髪結の道具だという。
それを髪飾りにしたのが簪ということらしい。

麻布という土地は諸説あるが「麻」の産地で、この辺りには「麻の布」を織る農民が多くいたことからと言われている。
麻の布は遺体を包んだりするのに使われたとされていて、そういった仕事をするのは「穢多・非人」と呼ばれた士農工商から外れた被差別民であったことから、この辺りはあまり良く言われな

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私写真

私写真

ぼくが生まれたばかりころは、まだほとんどが白黒写真で、カラーの写真がアルバムに登場し始めるのは小学校にあがったくらいのころ。
父親がなんというか、大変に撮影が「下手」な人で、撮る写真撮る写真ことごとく「手ブレ」を量産している。
せっかく七五三でおめかしして母と写っているはずの写真も、もはや誰が写っているのかすら分からない有り様だった。
当たり前だがフィルムなので撮ったものをその場で確認することもで

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「新宿駅の地下には海がある」

「新宿駅の地下には海がある」

"これは新宿の飲み屋で酔っ払いから聞いた話なんだけど「新宿駅の地下には海がある」という話を聞いたことがあって…まあ埋立地とかじゃないと思うし何のこっちゃと思って聞いてたんだけども、それはこんな話だった。

彼が東京に越してきたばかりの頃、その日は新宿で夜遅くまで飲んでいた。そろそろ帰るかと思って駅に向かって地下道をとぼとぼ歩いていると、不慣れなせいか道に迷ってしまった。
終電が近いと駅に向かう人の

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Q&A

Q&A

これはとある精神科医のサイトに寄せられた質問らしい。

—————————————————————————————- Q: 38歳の弟のことです。 —————————————————————————————- もう7~8年、定職に付かず家にいます。
以前から、姉である私に対して、幼稚な嫌がらせをしたりしていましたが、最近はそれがエスカレートしております。
平日の弟は、私が起きる時間より1時間

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翁、かく語りき

翁、かく語りき

面白いな。
生きてるときに話を聞いてみたかったな。

歳をとるにつれて撮れるようになるものって、あるような気がする。

ニューカラー

ニューカラー

好きな写真家は誰か、という話をすれば、それはもう数限りなく先達の名前が挙がるのであるが、とりわけ森山大道とウィリアム・エグルストンやスティーブン・ショアらの「ニューカラー」ムーブメントには、ひときわ惹かれる。

これは見事に「邦楽」と「洋楽」(この「邦楽」は日本の歌謡曲の意であって、笙や篳篥の「雅楽」ではない)そのものではないかと思う。

森山大道の写真からは昭和の脂っこい歌謡曲が聞こえて来るし、

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