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溶け込み目線で、社会を前に。

よりよい社会を、本気で想う。

お話を聞いたのです。サーキュラーエコノミー実践家の大山貴子さんに。
循環型社会の実現に向けた変革コンサルティングを生業とする、fogというデザインファームを主宰されている大山さん。留学したダラスで人種差別を受けて衝撃を受け、東北大の社会学研究室に入り浸るところから彼女の視線は一貫しています。“幸せな社会をつくるには、どうすればいいだろう”。大学時代に共に同じ目線で暮らした、ウガンダやエルサルバドルでのフィールドリサーチ。ニューヨークでの社会人生活で感銘を受けた、Park Slope Food Coopという全米最古のコープやCommunity Gardenといった市民活動。その後東京に戻って広告代理店に移るも激務で鬱になり、ヴィーガンカフェ運営を始めて実践したコミュニティづくり。そんなすべての足跡が、大山さんの土台となっています。さらに、新たな一歩を踏み出すきっかけとなったのが、カフェで考えたフードロス。でも、彼女は余り物を再分配すればいいというところで思考停止しないのです。


共視を生み出すデザイン。

率直に、食べ残されたものを分け与えるという点が嫌だったという大山さん。これは理屈でなく、審美眼です。でもこの感覚は人間としてとても大事なように思うのです。そもそも必要以上のものを買ってしまうから余るわけで、そうせざるを得ない多忙なライフスタイルからの転換パラダイムとして目が向いたのが、サーキュラーエコノミー。循環をベースにする、心地いい未来づくり。fogはこう謳います。サーキュラーエコノミーはサプライチェーンの再構築をすること。その実現のためにはステークホルダー分析やパーパスの特定など多角的な変革が必要、と。平たく言えば、人の目線を合わせて、変えなければ、実現しないよ、と。そこで大山さんは、“溶け込み目線”を調整することが肝要とのたまいます。それは、共に見る目線=共視をつくるデザイン。日当300円のエルサルバドルの大工さんが100円するコーラをこっそりシェアしてくれた感動を彼女は忘れません。人々の目線が溶け込み合わない限り、社会変革はなしえない。本来政治家が持つべき最も大切な視点と思いますが、実践する人がどれだけいることでしょう。

思考だけでなく、審美眼を。

そんな大山さんが今新たに始めようとしているのが、élab(エラボ)。サーキュラリティの日常化を実践するためのリビングラボ。コミュニティの循環として自らの住まいでもソーシャル畑やストリートブックポストをやる彼女はとにかく実践するのです。僕も共創型のコモンブックシェルフを実践していますが、動くことでしか見えないものにこそ明日のヒントが詰まってると本当に思います。そのためにも彼女が大切にしていることを教えてくれました。多角的に対象を見る/境界線を曖昧にする/脱サステナブル/巻き込むために甘える、依存する……とても得心で、机上からのみではけして出てこない視点です。サステナブルなんて言葉を安易に多用していた自分を反省します。すべては本当に人と人が溶け合う目線をつくるため。さまざまな人を置いてけぼりにしない。明晰な思考をバネにしながらも、人としての審美眼を軸にしっかり持つ大山さん。彼女が開こうとしている循環型社会への門は、明るい光が差し込んでいるように僕には見えます。


武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダーシップコース クリエイティブリーダーシップ特論/第12回/大山貴子さんの講義を聞いて 2021/9/27


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