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私たちは食べたもので出来ているvol.3#071

こんばんは。
佐伯です。
本日は大晦日の前日ということですが皆様、いかがお過ごしでしょうか?
私は自宅は日頃から清掃しているので特に大掃除はせず、代わりに実家の片付けと掃除をしに息子と実家に行きました。
年の瀬ということで神棚の清掃もしたので中々大変でした。

神棚の掃除をする父

さて、毎週土曜日は食について様々な角度から検証していく連載を始めたいと思います。

私は仕事柄、様々な食品に関わることがあります。
一つの製品に生産者様やメーカー様のこだわりや信念など、様々な思いが込められております。
これが製品の美味しさや健康への配慮、地球への配慮など様々な面でも思いが反映されています。

という訳で、今回は「有機栽培」について理解を深めたいと思います。
スーパーなどで有機栽培と記載のある青果をみると安心して購入しますよね?
でも有機栽培って何だろうと思いませんか?
調べてみると意外なことが分かりましたので、皆様と共有したいと思います。


①有機栽培ってそもそも何?

健康に良さそうなイメージはありますが、具体的には何のかイマイチ分かりませんよね。
調べてみたところ有機栽培の主な目的は、環境に優しく持続可能な方法で食品を生産することのようです。

  1. 環境保護:有機栽培は、合成農薬や化学肥料の使用を避けることで、土壌の健康を保護し、水質汚染を防ぎます。これにより、周辺の生態系と生物多様性を守ることができます。

  2. 土壌の健康の維持と改善:有機農法では、自然な肥料や堆肥を使用して土壌の肥沃さを高めます。これにより、健康な土壌が作物の栄養価を高め、長期的な農地の生産性を保証します。

  3. 持続可能な食品生産:有機栽培は、資源を効率的に利用し、長期的な視点での食品生産の持続可能性を追求します。これには、水資源の保護や気候変動への対応も含まれます。

  4. 消費者の健康の保護:有機食品は、化学残留物が少ないため、消費者の健康を保護することを目的としています。有機食品は、栄養価が高く、安全な食品選択とされています。

  5. 地域社会と経済の支援:地元での有機農産物の生産と消費は、地域の農家を支援し、地域経済を活性化させることにも寄与します。

  6. 教育と意識の向上:有機農業は、環境保護や健康な食生活についての意識を高め、持続可能な生活様式についての教育にも貢献します。

意外な事に、消費者の健康を第一目的とした生産方法かと思っていましたが実際には違いました。
最大の目的は「環境への配慮」だったのです。

それでは既存の農業がどの程度環境に負荷を掛けていたのでしょうか?

②既存農業の環境への負荷

人類の歴史において農業は欠かすことのできない産業です。
食べなければ私たちは生きては行けないですからね。

近代以降は化学が発展し、化学肥料が発明されたことで収穫高が劇的に増えました。
また、以前なら泣き寝入りしていた害虫に対しても効き目の強い農薬も発明され人類は少しずつ飢餓から解放され現在に至ります。

しかし、化学肥料や農薬の成功の裏には大変な負荷が地球に掛かっていました。
皆様、レイチェル・カーソン著「沈黙の春」はご存知でしょうか?

高校英語の教科書に掲載されるほどの有名な一冊です。

ざっくり説明しますと、1940年代から使用された農薬(DDT)の危険性について説明した本です。
著者はDDTの分解物が、自然界では非常に分解されにくく、食物連鎖を通じて生物濃縮されることを問題視し警鐘を鳴らした一冊です。

このように化学肥料や農薬は人類に福音をもたらしたと同時に新たな課題を与えることになりました。

蛇足になりますが、DDTは食糧生産については危険性が問題視されました。
しかし、ハマダラ蚊を媒介としたマラリアやシラミが原因で発症する発疹チフス(致死率10~60%!!)の伝染病予防に多大な貢献をしたことを忘れてはいけません。
実際に、DDTを開発したP.H.ミュラー博士(スイス)は1948年にノーベル医学・生理学賞を受賞しています。
DDTに限らず多くのものに2面生があることを忘れてはいけません。

③有機栽培の抱える課題

有機栽培は先進的で安全な画期的な農法だと言えます。
しかし、普及しないのは理由があります。
それを説明したいと思います。

  1. 低い収量:一般的に、有機栽培は従来の農業方法と比較して収量が低い傾向にあります。これは、化学肥料や農薬の使用を制限することによる影響が大きいです。

  2. 高いコスト:有機栽培は、手間がかかる場合が多く、労働集約型であることが多いです。また、有機認証を取得するための費用もかかります。これらの要因が、最終的な製品の価格に反映されることがあります。

  3. 害虫と病気の管理が難しい:化学農薬を使用しないため、害虫や病気の管理がより困難になることがあります。これには、より多くの労力や創造的な解決策が必要になります。

  4. 土地利用の効率性:収量が低いため、同じ量の食料を生産するのにより多くの土地が必要になることがあります。これは、土地利用の効率性の問題を引き起こす可能性があります。

  5. 市場へのアクセスと流通の問題:有機製品は特定の市場に限られることが多く、流通チャネルも限定されている場合があります。これにより、農家が製品を適切に市場に出すことが難しくなることがあります。

  6. 栄養管理の複雑さ:化学肥料を使用しないため、土壌の栄養管理がより複雑になることがあります。自然肥料の使用には、より多くの知識と管理が必要です。

要は、作るのも難しいが売るのも難しいのです。
化学肥料を使用して無い分、色や形は不揃いになりやすいですし、食味も安定しません。
また、収穫量も化学肥料を使用した場合に比べ圧倒的に少ないです。
それは農薬を使用しない代わりに人的コストが掛かり、害虫と病気の管理も難しく、農地の効率的な使用も難しいのです。

その上、有機栽培の作物は上記のとおり色や形が安定しないため一般への流通が非常に難しいのです。

想像してみて下さい。
スーパーに有機栽培だが歪で色もまちまちなトマトが1個200円で売ってたとします。
隣にはいつも買っている形も艶も良いトマトが1個100円で売っています。
皆様はどちらを買いますか?

恐らく1個100円のいつものトマトだと思います。
環境にも優しく、体にも優しい、良いことづくめですがそれでは売れないのです。
なぜならお客様は有機栽培についてよく知らないので判断しようが無いのです。

結局のところ有機栽培に限らず、地方の隠れた名品と呼ばれる商品も同じ問題を抱えています。

「質はすごく良いけど、誰も知らない」

「一度、買って試してもらえればわかるのですが!」と言いたくもなりますがお客様に選んでもらって実際に試してもらうということは、本当に難しいことなんです。

もはや営業、マーケティングの範疇になってきます。
私が今の仕事を始めたのも、世の中にはたくさんの

「試してもらえればきっと良さをわかってもらえる!」

こう言った商品を生産者さんに代わり声を大にしてお客様に説明し続けて、もっとお客様に良い商品を知ってもらい、生産者さんにもこれからも作り続けてもらいたいと思い始めました。

最後は自分のポリシーを語ったしまい恐縮です。
ですが、有機栽培を始め健康や環境に良い取り組みを一生懸命している方々が世の中にはたくさんいます。
こう言った方々の丹精込めて作った商品が日の目を見ることが、私にとって何よりも嬉しいことです。

それでは皆様、ご機嫌よう。

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