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KC Interview Vol.6 コンサルタントの適性

前回に引き続き、KPMGコンサルティングの人材開発室ディレクターの金子さんと弊社の百瀬朝子のインタビューの模様をお伝えいたします。

コンサルティングファーム解体新書 KPMGコンサルティング

前回からの「コンサルタントとはどういった仕事なのか」という話の続きです。今回はより具体的に、またどんな人がコンサルタントに向いているのか/向いていないのかについて語っていただきました。

コンサルティングは知的なサービス業

KPMGコンサルティング 金子ディレクター(以下、金子D):
意外かもしれませんが、コンサルタントは、絶対に主役になれないですよね。

ATJ 百瀬(以下、百瀬):
そうなんですよ!
 
金子D:
主役はクライアントなので、コンサルタントは常に脇役ですよね。だからステージの上で歌って踊るのではなく、黒子だったり裏方だったりするのがコンサルタント、つまり、サービス業です。サービス業は、基本的に誰かを喜ばせる仕事ですが、何でもいいから喜ばせれば良いわけではないです。
例えば、接待をしてクライアントが喜んでくれたらOK、ではもちろんなく、何をもって喜ばせるかというと、知的活動で喜ばせるサービス業なのです。
 
そんなコンサルタントに向いている人はどんな人かというと、必要な素養が2つあると思います。

まず知的活動が得意である。もしくは、得意でなくても少なくとも好きであるということ。
もう1つは、サービス業=自分が頑張って誰かを喜ばせるのが好き、あるいは得意であること。これは、どちらか1つだけで良いわけではなく、両方伴っていないといけません。
 
そう考えた時に、「あ、これ、自分は両方あるのかな」と気が付きました。
これまで一夜漬けでも頭使ってなんとか頑張ってキャッチアップしてきた自負がありますし、クライアントからの感謝の言葉を聞いて泣くほど嬉しかった経験をしたわけで。その時点で自分はサービス業に向いている気がしました。
 
でも残念ながら、頭を使って何かをするのが好きな人は、サービス業が好きではない傾向があって、逆にサービス業が好きな人は頭を使うのが得意ではない、という傾向がある。エビデンスはないですが、個人的にそういう傾向があるかなと感じています。
 
百瀬:
肌感的にですね!
 
金子D:
なので、サービス業と知的活動の両方ができる人でないとコンサルタントという仕事は難しいと思います。一般的には、コンサルタントというと、ロジカルシンキングやフレームワークと知的活動の方にスポットライトが当たりがちです。もちろんそれらも大事な要素ではありますが、それだけではない。根本的にコンサルティングは、サービス業であると認識してもらいたいです。
 
自分が頑張ることで誰かが喜び、それが自分にとって嬉しい。これ、実はとても不思議なことだと思っています。なぜかというと、コンサルタントは、クライアントの喜びに比例して報酬が上がるわけではないです。それでも‟嬉しい”と感じ、‟やりがい”を感じるのは、クライアントの喜びが自分の喜びにつながる回路があるとしかいいようがないと思うんです。
 
百瀬:
だから人じゃないとできないんですよね、コンサルティング業って。もしかしたらAIがツールの提供、ソリューションの提供、需要予測とか全部やってくれるかもしれません。だけれども、なぜコンサルタントがそこに入るかって、人だからですよ。心があるから。言っても泥臭いじゃないですか(笑)

ロジカルシンキングやフレームワークというのはツールでしかなく、結局誰と仕事しているって、クライアントとしているわけなので、そこに心がすごく伴う。だからこそ大変なこともあるけども喜びも大きいです。
 
金子D:
そうですね。
これも最近よく聞かれるのですが、‟コンサルタントはAI化されるとどうなるんですか?”って。こういうのって結構極端で、AI化なんかされません!全部安泰ですという人もいれば、いや全部AI化される!という人もいるのですが、ものごとって大概中庸で…、AI化されるところはされます。当然、業界の財務分析を比較して課題出しするところは、機械的にできてしまうので。
 
百瀬:
でもそこからですからね、大事なところは。
 
金子D:
そうです。答えらしきところまで作ることは機械でできても、それがクライアントにとっての答えにできるまで、昇華・進化させていくには、人と人のコミュニケーションが必要です。

なので、私は人と人とのコミュニケーションに強いコンサルタントが生き残ると思っています。ロジカルシンキングなどは、ツールに過ぎないので、しっかり勉強すれば身に付くものですから。
 
百瀬:
スキルは努力次第でいくらでも身につけられますからね。
 
金子D:
その通りです。重要なのは、スキルのその先で、人とコミュニケーションをとり、今はない何かを作っていくことです。機械が作った答えらしきものを‟クライアントの答え”にしていくには、時には長く厳しい旅が待っていますが、そこで、クライアントと一緒に歩んでいけるコミュニケーション力こそが、これからのコンサルタントに求められると思っています。
なので、サービス業が好き・得意、が根底にあることが、必須条件だと考えます。

『好き』を仕事に

金子D:
もう1つお伝えしたいことがあります。
 
コンサルタントになるために大事なことはなにか、と、特にコンサルティング業界未経験の方や学生からよく聞かれます。大体は、さっき話に出たロジカルシンキングやコミュニケーションスキル、プレゼンスキル、会計スキル、ITスキル、などと考える方が多く、もちろんそれも大事な要素ではあるのですが、本当にそれだけかな、とずっと考えていました。
 
私見ですが、人間の頭の中は、3層構造になっていると思っています。
第一層目は、「情報や知識」のエリア。何を知っていて、何を知らないのか。ここでは、会計の知識やITの知識やビジネスの知識などが当てはまると思います。次に、第二層目は、「技術とスキル」のエリア。何ができて何ができないのか。そこに、ロジカルシンキング・コミュニケーションスキル・プレゼン力が含まれるかと。

この2つに限っては、先ほど百瀬さんもおっしゃっていた通り、自分次第でいかようにもできますよね。情報はインプットすればいいし、技術は学べばいい。
 
ただ、残る第三層目は、「気持ち」のエリアで、何が好きで何が嫌いか、とするならば、それはきっと人間の一番深いところにあると思うんです。それを人は"価値観"と呼ぶのだと思うのですが、この"価値観"というのは、なかなか変わらないと思うのです。人は20年くらい生きてくると、好き嫌いの構造というのはある程度決まってきますよね。この年になると僕もわかるのですが、あの時好きだったものは、今でも好きで、逆に嫌いなものは今でも嫌いです(笑)
 
どの職業においても言えますが、コンサルタントの仕事も好きになれる人と好きになれない人がいます。であれば、コンサルタントの仕事が好きだと思う人には、是非コンサルタントになってほしいですし、それが社会のためにもなります。
 
でも、コンサルタントの仕事が好きになれない、あるいはちょっとでも嫌だなと思う人はならない方が良いです。その価値観の部分で親和性が取れなければ、コンサルタントになったとしても仕事が面白いとも思えないと思うんですよね。要は、"やりがい"を感じられない。
 
コンサルタントの仕事は、第一・第二層目が重要と思われがちですが、ここに僕は違和感があります。そうではなくて、好きなのか嫌いなのか、をベースにコンサルタントの仕事を考えてみてほしいです。
 
繰り返しになりますが、コンサルタントの仕事は頭を使って何かをすることが好き、自分が頑張って人に喜んでもらうのを見るのが好き、という価値観の人にはとても合っていると思います。今好きだと思えたなら、きっと20年後も好きだから。そういうところにこだわって、就職や転職先を選んでほしいと僕は心から望んでいます。

次回に続きます

コンサルティングファーム解体新書 KPMGコンサルティング


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