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国内最大級の日本語学校が担う多様な外国人材の育成と輩出。

 2024年には開校37年目を迎える「ヒューマンアカデミー日本語学校」。日本語を学びたい、日本の大学や専門学校に進学したい、日本で働きたい。そのように考える多くの人たちが、世界中から集まっています。学校を運営する国際教育事業部・事業部長の田中知信さんに、学びの特色と今後の展望を伺いました。


——ヒューマンアカデミーが運営する「ヒューマンアカデミー日本語学校」とは、どのような学校ですか?
 
 1987年に大阪で開校し、91年には東京にも進出した歴史ある日本語学校です。現在の学生数は4,000人超、国内最大級の規模を誇っています。日本語を学んだ上で日本の専門学校や大学に進学したいと考える人はもちろん、すでに日本で働いている社会人学生もたくさんいます。
 
——学びの特色を教えてください。
 
 多くの日本語学校では文法を中心としたカリキュラムが組まれています。それはそれで間違っていませんが、学ぶ立場からするとあまりおもしろくない。それよりも、まずは会話をしてみようというのが本校の方針なのです。
  教壇に先生が立ち学生がノートをとる、いわゆる座学スタイルの授業はそれほど多くありません。椅子を教室の中心に集め、タブレット片手の学生たちが車座で好きなことを言い合う。そんなフランクな授業が各教室で行われています。最初は間違ってもOK。とにかく日本語を発することで、外国語でのコミュニケーションに対する抵抗感が薄れていくのです。
 講師はティーチャーでなく、ファシリテーター。会話が活発になるよう、発言を促したり整理したり、学生たちがお互いに学び合えるシーンをつくりあげる役割です。そんなふうにして会話に慣れてきたら、あらためて文法をしっかりと学びます。

——オリジナル教材『つなぐにほんご』について教えてください。
 
 外国人の方々が、日本語を使って社会活動に必要なコミュニケーションを「できる」ようになること。それが教材のコンセプトです。「わかる」ではなく、「できる」。そこをゴールとして編集しています。
 具体的にはまんがを多用するなどして、よくある日常の場面を題材に会話を楽しく学べます。まずは「挨拶ができる」ようになり、それから「買い物ができる」「問合せができる」といった力をだんだん身に付け、やがて「就職面接に対応できる」「日本人と一緒に働くことができる」まで日本語レベルを高めていくのです。
 言葉は人と人をつなぎます。『つなぐにほんご』という書名には、「日本語で人と人をつないでほしい」「日本語で世界をつないでほしい」「日本語でいまの自分を将来につないでほしい」という願いを込めました。

ヒューマンアカデミー日本語学校オリジナル教材『つなぐ日本語シリーズ』アスク出版 


 
——デジタル教材についてはいかがでしょう?
 
 もちろん導入しています。日本語の記憶定着を測る教育支援システム「Monoxer」(モノグサ)は、出題する問題に答えていくだけで、学生の得手不得手をAIが判定してくれます。自分の苦手が見える化されるため、学びの重点をどこに置けばいいのかを知ることができます。そのほかにも、ネイティブに近い発音かどうかを判定してくれる発話アプリ「MY JT」などを活用しています。また将来的にはAI講師も登場するでしょう。
 とはいえ、日本語の会話練習においては対人で行うことも大事なんです。たとえば「うーん」と言ったとき、絶句しているのか、それとも次の言葉を探しているのか、AIには判定できません。けれど人間同士ならば、表情や身振りなど非言語情報を拾うことで、相手の言葉を待つなり、代わりに言葉をつなぐなり、人間らしい対応が可能です。そのような経験を積み重ねるには、やはりバーチャルよりもリアルな相手との会話が役立つのです。

 
——テクノロジーの進化で、これからは外国語を学ぶ必要がないという人もいますが?
 
 翻訳ソフトが旅行や買い物などで重宝されるのはいいことだと思います。けれど、この国の構成員として暮らしていくとなれば、その程度のコミュニケーションでは満足できなくなるはずです。もっと深いコミュニケーションをしたいと誰もが思うでしょう。私たちはテクノロジーの進化におびえてはいません。むしろ日本語教育には、まだまだてこ入れする余地があると考えています。

 ——日本語教育を取り巻く状況で、注視されていることは何でしょう?  

 外国人材の需要増に伴い、日本語教育の重要性がますます高まっています。2024年度からは、日本語学校の指導レベルや教師の質を保つため、国家資格「登録日本語教員」が創設されることになりました。 講師の質が保たれるのは学生にとって喜ばしいことですが、本校としてはほかの学校との差別化をより明確に打ち出さなくてはいけない。留学・就労・生活、あらゆる場面に対応できる日本語学校としてこれまで積み上げたノウハウを活かしつつ、さらに教育の質を高めていきたいですね。

 ——今後の事業展開についてお聞かせください。 

 まずは、2024年4月に「就職1年コース」を新しく開講します。外食業・宿泊業の特定技能在留資格を得て、日本国内での就職を目指す人に活用してもらいたいコースです。通常の日本語学習に加え、技能試験対応や就職活動も手厚くサポートします。
 ご存じの通り、少子高齢化の進む日本では労働力不足が大きな問題となっています。かつて日本語学校は、外国人のための進学予備校といった位置づけでしたが、現在はそれに加えて多様な外国人材の育成・輩出機関という役割も担っています。日本で働きたいと考えるさまざまな国の方々が、仕事と生活いずれの面でも困ることのない日本語能力を身に付けられるよう、私たちの責務は今後ますます重くなるでしょう。
 その一方で、働く場としての日本は人気が低いという現実があります。多くの先進国で労働力が不足しており、外国人材が賃金の高い国を選んでいるからです。そのような状況で、どうすれば日本を選んでもらえるかを考えていく必要があります。平たく言えば、海外に日本ファンを増やすこと。これもまた、私たちの大切な使命と考えています。

——田中さんご自身の目標を教えてください。  

 日本語教育事業を海外に広げることです。海外で増やした日本ファンに日本語を学んでもらい、日本国内へ輩出する。そのように日本経済を支える流れを仕組み化することで、社会的な役割を果たしていきたいですね。
 ヒューマンアカデミーの日本語教育は質と量で世界一になれると思っています。日本には国内市場しか見ていない人も多いですが、これからはグローバル視点でビジネスを創出できる人が必要とされるでしょうし、私自身もそうなりたいと願っています。そしていつの日か孫と海外旅行をしたとき、現地でにぎわっているヒューマンの日本語学校を指しながら、「じいちゃんがつくった学校だよ」と自慢したいですね(笑)。

<プロフィール>
ヒューマンアカデミー株式会社
国際教育事業部 エグゼクティブオフィサー
田中知信さん
 
1972年生まれ。大学で経営学を学び、卒業後はマレーシアで日本語講師として2年間勤務。帰国後、外国人向けの日本語講師を7年間務めた後、2004年にヒューマンアカデミー株式会社入社。一貫して日本語教育事業に携わり、2018年以降は事業部長として日本語学校校長を兼務している。


※2023年11月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。
 肩書き・部署名等は取材時のものとなります。

アスク出版について https://www.ask-books.com/
 株式会社アスク出版は2008年1月設立。主に英語、中国語、韓国語、日本語などの語学書の語学テキスト・問題集・実用書等の出版および販売や販実用・教育用ビデオなどの企画・制作・販売を行っている。


ヒューマンアカデミーは、学びの面白さを提供する「Edutainment Company」として、1985 年の創設以来、時代や社会の変化にあわせながら800以上の講座を編成しました。未就学児童から中高生・大学生・社会人・シニア層とあらゆるライフステージにおけるSTEAM教育やリスキリング、学び直しの支援を行っています。
 さらに、独自の「ヒューマンアカデミーGIGAスクール構想」を推進し、学習支援プラットフォーム「assist」を開発。SELFingサポートカウンセラーと講師が、個別に学習目的や目標にあわせた進捗管理や相談などの学習サポートをします。私たちは、常に最先端の教育手法やテクノロジーを取り入れ、学びの喜びを追求し最高水準の教育サービスを提供していきます。