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「かもさんおとおり」の絵本作家、マックロスキーが描いた風景

古き良きアメリカの日常風景を描いた絵本作家、ロバート・マックロスキーは、時代や国を超えて、今でもたくさんの人を魅了し続けています。

嵐の晩のドキドキと一夜明けた朝のまぶしさ、初めて歯が抜けたときの驚き、買い物に遠出しておやつに買ってもらったアイスクリームetc、誰もが経験したことのある普遍的な日常の一コマを、確かなデッサン力で愛情深く描いています。

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すばらしいときの原題は「Time of Wonder」 子どもだった頃、世界はまさにWonderに満ちていました。マックロスキーは、絵本でありながら「You(おまえたち)」という言葉で語りかけています。幼い二人の娘をみつめる優しい眼差しと、家族で過ごしたメイン州の美しい自然に招かれるように、ボストンを起点にペノブスコット湾を訪ねました。

ボストンで「かもさんおとおり」に会う

まずは「かもさんおとおり」に会いに、ボストンのPublic Gardenへ。   市民の憩いの場である公園には、白鳥やカモがたくさん♪

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マックロスキーはボストンで壁画を描く仕事をしていました。当時はまだ絵本作家という職業は確立しておらず、絵本の黄金期を担ったと言われる作家たちも、別の仕事から偶然絵本の世界に入った人がほとんどでした。 

1942年に第5回コルデコット賞を受賞した「かもさんおとおり」は、マックロスキーが街中で目にしたカモの行列が元になっています。夏の風物詩スワンボートも登場しますが、遠近感や縮尺がとても正確で驚きます。

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カモのお母さんは「マラードおくさん」(=マガモおくさん)という上品な名前があり、カモの親子を描いていながら、読み手に「家族」を思い起こさせてくれます。家族をとりまく人たちもみんな温かい・・・

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公園の一角にある「かもさんおとおり」を模した銅像は、いつも大人気。子供たちも自分の身長にあわせて、お母さんに乗ったり子ガモに乗ったりして楽しそうでした。

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よく見ると、子ガモたちのポーズも色々でかわいいんです♡ マックロスキーが「かもさんおとおり」を仕上げたのはニューヨークで、スケッチするためにバスルームでカモを飼っていたそうですが、あっという間に成長してしまって大変だったとか。そりゃそうだ~(笑) 子どもは細部までじっくり見ますから、マックロスキーは”正確さ”も大切にしていました。

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「かもさんおとおり」で世に知られるようになったマックロスキーは、絵本とは別の画業でローマ賞・ティファニー財団賞を受賞しました。ライフ誌が取材に訪れ、飼っていたカモに囲まれてハーモニカを吹いている姿を写真に撮りましたが、ヒトラーがポーランドに侵攻したため、出版に至らなかったそうです。世界中で長く愛されている絵本は、戦争の時代とともにあったのですね。

ウサギと亀さんもいるよ! ボストン市民はおはなしが好き?

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マックロスキーが見た「すばらしいとき」(メイン州)

続いてメイン州へ。マックロスキーが住んでいた島のあるペノブスコット湾を目指します。メイン州は西側をカナダと接していて、6000以上の湖沼やフィヨルド式海岸もあり、バケーションランドの別名とロブスターやウニなどの漁業で知られています。元大統領のブッシュファミリーの別荘もあるそうです。

<地図:google map>

メイン州 (2)

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お目当ては、ペノブスコット湾のバックスハーバー。実名で何度も登場します。私たちはDeer Isleの素敵なインに泊まりました。地図をみると、プライベートアイランドがたくさんあるのも頷けます。私もひとつ欲しい!

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島を結ぶ橋

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バックスハーバー

そこには言葉を失うほど、「海べのあさ」そのままの風景が広がっていました・・・

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港を上がってすぐの道沿いにある白い建物は・・・

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コンドンさんのお店と教会です。

うみべの

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古びたガソリンスタンドとモーターが残っていました。

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お父さんは、コンドンさんのお店でボートのモーターを修理してもらったのです。

うみべ

建物はもう使われていないようでしたけど、タイムスリップしたみたいに生き生きと絵本の世界がよみがえりました。

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あ、サリーとジェインみたいな女の子がいた!!

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ちょっとピンぼけですけど、サリーが歯が抜けたことを報告したあざらし君も、頭をのぞかせてくれました。

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マックロスキーの絵本は、色彩もことばも本当に美しく、自分もそこにいて同じ空気を吸っているような気持ちになります。

みてごらん、世界のときが ゆきすぎるのがみえるから。 一分一分、一時間一時間、一日一日、季節から季節へと。 (「すばらしいとき」より)

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マックロスキーの絵本は図書館に必ず置いてある古典です。ぜひ手に取って読んでみて下さいね。最後にマックロスキーがインタビューで語った言葉を引用して終わります。 

子どももおとなも自分が見ているものを真に理解していないことがしばしばあります。背後にあるものまで思いが及ばないのでしょう。「うん、これは本棚だ」とか、「あれはゾウだ」という事実しか見ていない。まわりとの関係性ー家と環境、人とまわりの環境、ものの尺度ーに思いをはせていないのです。熟考もせずにあまりにも多くを見過ぎるために、原因と結果についての理解が失われているのです。テレビがこの状況に拍車をかけている。見るという行為は判断の過程であって、自分のまわりのものを評価することです。子どもがこの能力を発達させるためには、描くことを学ぶしか方法はありません。

<お断り>2008年の旅行記です。今はすっかり変わってしまったかも知れません。あの思い出をとどめておきたくて記事にしました。読んでくださってありがとうございました。

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