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マギーB

夏休み明け、久しぶりにFのアトリエで一人仕事していると、

ふと、「アトリエは船なんじゃないか」と思った。

もちろんFが船長で、私は船乗り。

船長の舵取りに従って、私が船を漕ぐ。

凪の時もあれば、心地よい風が吹いて、船が順調に進む時もある。
へんなお客さんがやってきて、ちょっとした荒波を起こしたり、
大雨でアトリエが水没した日には、文字通り大嵐だった。

船長が機嫌のいい時もあれば、悪い時もあって、船乗りも然り。

長所も短所もひっくるめて、それでもやっぱり、彼女と仕事するのは楽しいなと思うし、ここ=アトリエは、私の場所なんだなと思う。


すると、昔読んだ「わたしの おふねマギービー」という絵本を思い出した。

あれは姉の絵本で、まだ小さい私には、それがどんな話なのかよくわからなかった。

今でもお話については思い出せない。

ただ、あのお船の小ささ、木の感じ、体ごとお船にくるっと包まれた感じだけが印象に残っていて、それが今、私が仕事しているアトリエの感じとよく似ているような気がした。

小さい時の私はあの時の印象を頼りに、今ここに辿り着いたのかもしれない。


ウィンドーの外にはご近所のウエディングドレス屋さんが、仕立てたドレスをお客さんの車に積み込むのを手伝っている。

彼女の作るドレスは、毎回見惚れてしまうほど美しい。

彼女はポール・トーマス・アンダーソンの「ファントム・スレッド」を見ただろうか。

久しぶりにヴィッキー・クリプスが出る映画を見たくなった。