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「ねぇ、きみなの? 来てくれたの?」

昨日から、なんか集中できない。

声がするの。鳴き声が。聞き覚えのある「あぁ-、がぁ-っ」っていう鳴き声。

去年の9月に旅立って行ったきみ。

きみがいたテラスの冬

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季節はめぐり


春が来た

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毎年、3月になるとカラス達は忙しい。

子作り、子育ての季節の到来だ。

空を行くカラスのくちばしには、木の枝が。

せっせと、巣をつくるために、ひっきりなしに飛んで行く。

今年は、このテラスの奥にある木の小枝をもぎ取りに来るカラス達が。

昨日から、あの懐かしい鳴き声がずっとしている。

私にはわかる。

そう、あれはジュ-ルなんだ。

いつも数羽でやって来て、高い木にとまる。

テラスに出て、何度も何度も「ジュ-ル、ジュゥゥ-ル」って呼んでみる。

テラスに降りてきてはくれないけれど

だって、もう、きみはカラスの世界で生きているんだ。

仲間といっしょなんだもの。

でも、おがぁさんの近くに来てくれたんだね。

ほら、また鳴いている。

高いモミの木の枝にとまったきみ。

「がぁ-」って鳴いた時に、羽根をバサバサっとしたね。

いつもそうやって鳴いていたきみ。

やっぱりジュ-ルなんだ。

来てくれたんだ

親になって、ここに戻って来てくれたんだね。

ジュ-ル、ジュ-ル、

遠くからおがぁさんを見てくれているの?

鳴き声がするたび、懐かしさで胸がいっぱいになる。

ジュ-ル、ジュ-ル、

一度でいいから、もう一度、この腕に舞い降りて。



あとりえ・あっしゅ









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