自己紹介
ご覧いただきありがとうございます。
静岡市内唯一のヴァイオリン工房Atelier ASAHIでヴァイオリン職人をしているナカオといいます。
ここ(note)では、工房や仕事のようすを中心に私自身の趣味の話なんかをしていく予定です。ヴァイオリン職人って実際は何をしているの?とか、弦楽器をされている人へ向けたお役立ち情報なども公開していきますので、ぜひフォローして覗いてみてください。
さて、最初の記事は自己紹介を。
幼少の頃からピアノ、エレクトーン、ヴァイオリンを習い、ドンピシャで中学2年のときにギターを始めます。楽器を弾くのが楽しかったんだろうなぁ。ギター以外はレッスンに通っていて発表会や演奏会は沢山やったけど、今思い返すと練習はしてなかった。部活は吹奏楽じゃなくて中高共に弓道部。これも弓という意味では今につながっているのかもしれない。県大会個人・団体で優勝や全国3位とかにもなってます。ゾーンに入ると強いみたい。その後、高校で英語が好きになり学部生では英米語を専攻、卒業後は普通に就職して会社員をするも、カナダへワーホリに出掛けることになります。
会社員時代は、2年目から店長職を必死にこなしてました。予算を立てて数値目標に挑戦・クリアしていったり、営業会議では業績を分析追及されてみたり。アルバイト募集からトレーニングを含めた人材育成、在庫管理と棚卸、イベント・販促企画などもやって、一通り店舗運営とはなんぞや?っていうのを経験しました。新店立ち上げや業績不振店舗の閉店→移転任務を任されたことも数回。コミュニケーションの大切さも身をもって体験したのもこの頃で、バイトさんにストライキ起こされたこともあったし、店舗が変わっても足を運んでくれるお客さんに出会えたこともそう。人との関りって人生なんだなぁって感じるようになりました。
カナダには本当は1年だけのつもりで行ったんだけど、ここでも人との縁で5年半ほど就労ビザを更新して生活してました。大学卒業→就職組なので、日本の仕事の価値観にしか触れていなかった私にとっては、金づちで殴られたような衝撃。仕事についても生き方や考え方についても。いわゆる白人が多い北米とはいえ、欧州がオリジンの人やアジア・アフリカからの移民、先住のネイティヴアメリカンなど、体型体格や肌の色がまるで違う人たちが一緒に暮らしているんですよ。日本じゃ肌感をもって絶対に体感できない異文化と異価値観。何かにつけて分けるのは好きじゃないけど、自分がマイノリティ側になることって日本では少ないので、カナダでは良くも悪くもその辺の体験ができたのは良かった。
カナダでの仕事はいうと、カナダへ行ったことがある人にはおなじみのドーナツ屋さん、Tim Hortonsが母体となっているティム・ホートンこども財団の職員として、同団が運営するキャンプ施設の維持管理業務にあたってました。
基本は何でも屋さん。簡単なところだとベッドが壊れたら直すし、夏は広大な芝生の運動場をトラクターで草刈りしたり、冬は施設内の道路や歩道をPickUpトラックにPlowBladeを付けて除雪したり。大きなプロジェクトだとこどもの宿泊棟をオフィスにリフォームしたし、馬小屋や納屋の建設やパドックのフェンスづくりなどなど。他にも上水道管理や施設内の車のメンテナンス(各種オイル交換やパーツ交換)もやるし、チェーンソーを担いで野山に分け入り乗馬トレイルの新設なんかをしてました。
これらの経験は、いま職人をしていても凄く役に立っていて、様々な道具や機械を使えるのはこのカナダ生活があったからこそです。突拍子もないことが起きて、まるで違う価値観を持った同僚たちとどう問題解決していくか。一応、平職員ではなくてTeamLead職だったので、それぞれの意見を汲み取り活かしていくかを考え、英語でコミュニケイトするのは大変だったけど充実した日々でした。
では、いつ弦楽器業界に足を踏み入れたのかというと、30代に入ってからになるんですよ。なので、ハッキリ言って10代の頃から製作に取り組んでいる人には絶対かなわないと思ってます。でも私は弦楽器製作家ではないので弦楽器職人とはいえ住む世界が違う。ヴァイオリンはそれなりに弾けるし、耳や音を感じる器官には自信があります。というのも、学生時代に受けた公開レッスンでは先生方に「演奏は駄目だけど驚くほど耳はいい。そこは保証する。君より耳が鋭くないプロ演奏家は沢山いるから自信を持って取り組みなさい。」というように毎回言ってもらったんですよ。
実際この業界に入って、世界をまたにかけて活躍するソリストさんが何度目か来店したときに、ヴィブラート変えましたか?お伝えしたら「え!?分かる?嬉しい、前回来たときとかけ方変えてるんだよね~。誰も気付いてくれなかったけど分かるんだ。」と言ってもらえて更に自信が増しました。
また、TV番組にも出演する演奏家さんの調整中には、魂柱をちょっと動かした際に、彼の右肘が緊張して自然じゃなくなったとコメントすると「そうなんだよ、楽器がMaxで響くRangeが変わったから運弓のニュアンスを変えないといけなくて。」と、音以外の部分にも気付いたことで、その安心感が信頼に変わっていったこともありました。
どうやら耳だけではなくて、音以外の変化にも気付く能力なのか違和感をおぼえる感覚なのか、嬉しいことにそれが備わっているみたいです。今後も大切に、そして大事に伸ばしていきたいところ。
こんな感じで都内の楽器店ではトータル8年間、貴重な経験をさせてもらい、色々あって2023年9月より地元の静岡で工房を始めることなりました。その間には、都内の楽器ディーラーに研修生として採用をいただいたり、家庭の事情により他業種への就職するために動いていた時期もありますが、やっぱり楽器が好きなんですね。現段階では自宅兼工房にはなりますが、お店をスタートしてもう直ぐ半年が経とうとしています。
私が目指す工房は、誰でも気軽に何でも相談できる場所の提供。ヴァイオリンってお上品な趣味と思われがちなんですよね。それを払拭していきたいし、楽器のことをもっと知ってもらって演奏の楽しさをもっとお届けしたい。その楽器が誰によってどこで作られ、いくらかだったのかとかは関係ないんです。もっと格好良くしたかったらデコればいいと思うし、こどもさんが使う分数楽器には好きなキャラクターのステッカーが貼ってあっても良いと思う。歴史的に(また今後の)価値がある楽器は遠慮してもらいたいですけど、もっと気軽に弦楽器演奏を楽しめる社会に変わっていってくれたらなぁと願っています。それが西洋音楽が文化として浸透していくということなのかなぁって。
もうひとつ、工房を静岡にしたのにも理由があります。自己紹介の通り、自分も学生の頃はレッスンを頑張っていました。で、当時問題だったのが弦楽器専門店が県内に”ひとつも”無かったこと。毛替えをしようにも東京や名古屋に行くか、出張調整会で来県してくれるのを待つしかなかった。弦を買うのも一苦労だったんです。そんな苦労をもうさせたくはない!これが地元静岡で工房をスタートさせる原動力になっています。
今では、三島に弦楽器専門店と藤枝に工房がありますが、2015年くらいまで毛替えをその日に仕上げてくれる工房が無かったんですよ。静岡(というか浜松)は楽器の街と言われる通り多くの楽器メーカーの創業地であり、工場や拠点が軒を連ねていますが、そんな静岡に工房が無いってちょっと淋しいよなぁって思ってたんです。でも徐々に弦楽器の輪みたいなものが広がってきているのは本当に嬉しいし、その一端を担うことができるのであれば、こんなにありがたいことはないと感じています。
そんな訳で、つらつらと自己紹介をしてみましたが、私ナカオの人間像は伝わったでしょうか?県内で(擦)弦楽器をされていて、工房を探していたらアトリエアサヒが引っ掛かった人に、工房の職人のプロファイルが伝わったのであれば最高です。SNSから来てくれた方も本当にありがとうございます。今後もSNSだけではなくて記事の更新も頑張っていきますので、チェックしてみてくださいね。では。
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