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仕事で泣きたくなった日に読む本「大人たちの失敗」櫻井よしこ著

新しい仕事を任されました。

私は接客業務だけでなく、「人を育てる仕事」もしています。

朝出社したら、管理職から「ちょっといい?」と呼ばれ、「くららさんに、新しい仕事を任せようと思います。お願い出来ますか?」と。

任されたのは、「”人を育てる人”を育てる」仕事。いわば先生の先生です。嬉しかったのでもちろん「はい」と即答しましたが、少し時間をおいて考えると、「私にできるかしら?」とかなり不安になりました。

挑戦は好きです。新しい挑戦はわくわくします。けれど私は0を1にすることがあまり得意ではありません。今回任された仕事はマニュアルがなく、企画からやる必要があるもの。しかも自分は未経験の業務です。教えてくれる人はいません。それでも、自分の育てた人材がしっかり結果をだせるよう育てなければいけず、責任は重大です。こうなると私はすぐ”あっぷあっぷ”してしまいます。「無理だ」と泣きたくなりました。

そこで思い出したのが、最近読んだ本。

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『大人たちの失敗』 櫻井よしこ・著(2000年)

現代日本が抱える社会問題と、未来への指針が書かれています。2000年に出版された本なので、定義されている社会問題は21年前のもので古めかもしれません。けれどこの本で最も感銘を受けたのは、櫻井さんが駆け出しのジャーナリストだった頃の話でした。

第七章「若者たちへ、仕事とは何か」

①どんな時でも「できない」と思わない。

櫻井さんが新聞社の助手だった頃、上司のために毎朝大量の新聞を読み、重要だと思う記事の切り抜きをする仕事を任されました。しかし膨大な情報量で、時間内に終えるのは不可能と悩んだそうです。結局、出社してからこの仕事を始めていたのを、通勤中にも時間を割く事で解決したとのこと。当時を振り返って、櫻井さんはこう語っています。

「前向きに取り組むことが大切。「できない」と思わないことが大事。自分にできないと思った瞬間に、本当にできなくなってしまう。たとえこなすだけの能力があったとしても、できないと判断したときには、本当にできなくなってしまう。どんなことでも決してできないと思わない事、必ずやってみること、全て前向きに考える事がとても大事だと思う」

②自分を厳しく見つめる人はいい仕事ができる

櫻井さんの上司は、常に櫻井さんより1~2時間早く出社して仕事をしていました。その姿は櫻井さんに、仕事に臨む姿勢を教えたのです。

「彼女は自分に厳しくしなさいという事を教えてくれた。いちばん厳しく見つめるべきは自分自身であって、周りのことではない。(略)多くの人の多くの思惑が交錯する職場で、自分が完全に理解され、公正に評価されるのは、およそあり得ない。常に、自分は周りのために何ができるかを考え、回りには出来るだけ温かい目を、自分自身には厳しい目を向けている人こそが、いい仕事をしていくのだろうと思う。」

③報酬を優先して考えない方が、人は大きく伸びる

助手をしていた櫻井さんに、他社から引き抜きの話がきた時のこと。報酬も大幅にアップし、大きな新聞社からのオファーでした。しかし当時の上司を尊敬し、まだまだ学びたいことがあると思った櫻井さんは、引き抜きのオファーを断りました。ちなみに当時の櫻井さんのお給料は、相場の半分以下。けれどこの助手時代があったから、今の櫻井さんがあるのです。

新しい仕事を任される度に、誇りを感じつつも、大変な時には「なぜ自分だけ?」と思ってしまうことがあります。どんなに新しい仕事を任されようと、給料は皆と一緒です。けれど、対価はすぐに手に入るとは限らない。「この経験が一体何の役に立つのか?」とわからないものでも、ある日人生の思わぬところで生きてくるものです。そして経験を生かすも殺すも自分次第。

「できないと思わない」「自分を厳しく見つめる」「報酬を優先して考えない」櫻井さんの著書のこの3つを思い出し、「とりあえずやってみるか」と思ったら、気持ちが落ち着きました。

責任感があり、やるからには完璧にこなしたいタイプの方は、私のように”あっぷあっぷ”することが多いのではないでしょうか。けれど仕事は経験を積んだもの勝ち。せっかく舞い込んだチャンスは楽しんでものにすべきです。

この本の最後は、子供たちが希望をもって夢を描けるような社会にしていきましょうというメッセージで締めくくられます。せめて生き生きと働き、生きる大人でありたいものです。