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平行線が交わる世界を創造する


二つの平行な直線は交わらない

中学校の数学を真面目にやったことがある人にとっては当たり前のように思われるこの命題ですが、しかし実は「平行線は交わらない」というのは「ユークリッド幾何学」という学問の上では成り立つ命題ですが、「非ユークリッド幾何学」のという学問の上では成り立たない命題です。

ここで一つの疑問が生まれます。つまり

「非ユークリッド幾何学」なんていう現実に存在しない世界で計算してなんの意味があるのか?

ということです。

平行線が交わってしまう世界で計算された数式がこの世界で役に立つとは思えないからです。



しかし2019年4月10日、イベント・ホライズン・テレスコープという地球上の8つの電波望遠鏡を結合させた国際協力プロジェクトが、史上初めてブラックホールの撮影に成功したという、先ほどの疑問と一見関係がなさそうに思えるこの出来事が、その疑問に対する示唆を与えてくれます。

つまり

平行線が交わる世界の話が、この現実世界でも成り立つ

ということです。

ブラックホール

上の画像はイベント・ホライズン・テレスコープが撮影したブラックホールです。

ブラックホールインターステラー

そしてこの画像は2014年(つまりブラックホールが確認される前)公開の映画『インターステラー』の作中に登場したブラックホールです。


上の2枚のブラックホールは驚くほど似た形をしています。


映画『インターステラー』はカリフォルニア工科大学の理論物理学者キップ・ソーンの監修で撮影された映画です(なのでただの娯楽映画の枠を超え、物理学映画としても楽しめる作品です)。

ですのでインターステラーに出てくるブラックホールは、理論物理学者が机上で計算して「おそらくこんな形をしているのだろう」と紡ぎ出したブラックホールの姿でした。


2枚のブラックホールの画像が似ていたということは理論と現実が一致したということです。

そしてここで注目したいのが、ブラックホールを予測するのに物理学者が使った理論が「非ユークリッド幾何学」だったということです。


はじめに「非ユークリッド幾何学」という非現実的な世界で計算することになんの意味があるのかと述べました。

なぜならそんな”非現実的な世界”では成り立ってもこの「平行線が交わる現実世界」では全く通用しない”無意味な”数式の羅列だと考えたからです。

ところが今見てきた通り、”無意味な”数式だったはずが、現実世界のブラックホールを忠実に予測していたことがわかります。

私はこのことから文字通り

平行線が交わる現実世界は存在する

と確信しています。

そして

「非ユークリッド幾何学」で計算したしたことに意味がある

とも言えるでしょう。


しかし実は私は「人間は有限な存在で全ての存在を認識することなど当然できるはずもない」と思っているたちの人間ですので、この「平行線が交わる世界が存在する」という事実に感動こそ覚えますが、取り立てて驚くべきことではありませんでした。「ま、そんな世界はあるのだろうな」というぐらいの感覚でした。


しかしブラックホールの撮影の成功という事実はそれ以上の示唆に富んでいます。


つまり、ある世界を創造するとき、最初に定義する命題はこれも文字通り、何でもいい、ということです。

先ほどの例では、二つの平行線が交わる、という(一見無茶苦茶な)仮定をして、あとはその世界の公理に任せて計算をしていきました。

この世界ではありえないと思えるようなことでも、はじめにそれを仮定してしまえば、その世界線は存在するということです。



人間にとっては全く間違っているように思われる原理が存在するそんなパラレルワールドのような、いや、一つの世界に複数原理が存在していると考えていますので、パラレルワールド以上に複雑な世界を今私たちが生きているということになります。

そうやって考えるとなんだかとても楽しい気分になりますよね。悩みなんか吹っ飛びます。


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