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2020年度 第15回小学館ライトノベル大賞 研究

私は川崎中と申します。かわさきあたりと読みます。
10年ほど前にライトノベルの新人賞を受賞したことがあります。

ただその後は一切結果が出ず、商業出版とは無縁の人生を送っています。
noteでは、あの時なぜ受賞できたかの検証と、その時のやり方を言語化すれば改めて受賞できるのかの挑戦を行っていきます。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

先日、GA文庫大賞に関して応募を完了したため、次は小学館ライトノベル大賞への応募を目指したいと思います。
そのため、小説作成の前段階として受賞作の研究をしていきます。

2020年度、第15回の受賞作は下記のとおりです。

負けヒロインが多すぎる!(雨森たきび)
嘘つき少女と硝煙の死霊術師(岸馬鹿縁)
貘-獣の夢と眠り姫-(長月東葭)
公務員、中田忍の悪徳(立川浦々)
ロストマンの弾丸陽(水田陽)

全体感想

ダークなバトルものが多数

ダークな異能バトルが多数受賞している回でした。「嘘つき少女〜」「獏〜」「ロストマン〜」と他の回も含め、この賞のバトルものはかなりダーク寄りだなーという感じです。その中でも暗くしすぎず、可愛らしいキャラクターのコミカルなやり取りがどの作品も花を添えます。ダークとコミカルが相反するからこそ魅力的に映るのでしょう。

そしてメタった馬鹿話

「負けヒロイン〜」「公務員〜」は既存ラノベを揶揄したというか、利用した作品というか。どちらも既存作品を逆手に取った作品でした。漫画やラノベなどは特殊な世界のため、独自に進化した独自ルールが存在します。
負けヒロインなんとまさにその概念だし、公務員〜の方では一般的なラノベ要素に対する一般的では無い対応が、むしろ正しいかもしれないなぁと思わされました。
既存の作品を読みながら、「それはないだろ〜」という部分を見つけられれば、この賞への活路になるかもしれません。

理由無きボッチ主人公は珍しい

「負けヒロイン〜」の主人公はボッチですが、この賞では珍しいかもしれません。全くモテない主人公が、謎の力が働いてモテまくるみたいな、読者を甘やかしたような作品は3年分読んだ限りはこの作品が初でした。
さらにいえば「負けヒロイン〜」だって仲の良い女友達がたくさんできているだけで本当にモテているわけではないので、そういう意味でもこのレーベルは読者を甘やかす感じの作品が好きでは無いのかな、という印象です。

作品別感想

負けヒロインが多すぎる!(雨森たきび)

主人公がボッチなのにモテまくり、可愛いヒロインがたくさん出てくるいわゆるハーレムものだが、しかし主人公はみんなの本命では無いという珍しい構造。というか既存ラノベのメタ作品。
アイディアが面白いし、主人公は本命では無いとはいえ、クラスメイトの女の子と仲良くしたいという読者の欲求を満たしてくれる優しい作品。自分に矢印が向いていなくても、可愛い子に囲まれながらこうやって学園生活を送れたら楽しそうだなぁ、と感じる。

嘘つき少女と硝煙の死霊術師(岸馬鹿縁)

主人公が相棒の死骸とともに敵と戦うバディもの(仲間は他にもいるが)。世界観設定がよくできており、異世界の雰囲気が味わえる。結構俺TUEEだが、そこまで俺TUEEを強調されてはいない。
バトルの場面が多いものの、主題は恋愛ものという感じもする。割り切れないような状況にいるはずの主人公だが、相手に対する強い思いが描けている。
やりとりもラノベっぽく軽妙で楽しい。

貘-獣の夢と眠り姫-(長月東葭)

夢の世界でのバトルもの。魔法よりは銃火器。職業として戦っている。キャラが軽妙で、ラノベらしいやり取り。楽しくごちゃごちゃしており、誇張されたキャラクターやボーイミーツガール的展開がとてもラノベらしい。
SF的要素の強い作品で、またそちらも良く書き込まれている。とても疲れそうな世界ではあるものの、もしかするとそんな方向に世界が向かうかもしれないなぁ、なんてちょっと思う。
軽妙でラノベ的だが、グロテスクな部分もあり、非常によいスパイスになっている。

公務員、中田忍の悪徳(立川浦々)

コント系。キャラ同士の掛け合いの漫才というより、そのシチュエーションに真面目に向き合う主人公を客観的にみて楽しむ作品。また、既存のファンタジー作品をややメタ的に揶揄している作品。
主人公が大変真面目で、めちゃくちゃキャラが立っている。彼がいればそこが普通の職場であろうが、あるいは異世界との邂逅であろうが面白いシチュエーションとなる。ずっと面白かったし、興味深かったし、さまざまな知識も散りばめられていて楽しく読める。

ロストマンの弾丸(水田陽)

異能バトルで、ややハードボイルド風味。現代日本とは違う世界だが舞台は東京。マフィアの抗争が舞台にあり、アクションシーンも多く手に汗握る展開が続く。
主人公サイドだけではなく、敵サイドも魅力的に描かれているので、クライマックスでどうなるのか気になったし、とても楽しみながら読めた。
ごちゃごちゃした世界観や雰囲気も魅力的で、映像作品にしたら格好良くなりそうだなぁと思える作品だった。


主人公を頑張らせるのか、甘やかすのか、でいえば頑張らせる方が重要なのだなぁ、感じる回でした。他のラノベのイメージで、脳死で謎にモテる主人公を書いてしまうと、やや違うのかもしれませんねぇ。

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