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2022年度 第17回小学館ライトノベル大賞 研究

私は川崎中と申します。かわさきあたりと読みます。
10年ほど前にライトノベルの新人賞を受賞したことがあります。

ただその後は一切結果が出ず、商業出版とは無縁の人生を送っています。
noteでは、あの時なぜ受賞できたかの検証と、その時のやり方を言語化すれば改めて受賞できるのかの挑戦を行っていきます。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

先日、GA文庫大賞に関して応募を完了したため、次は小学館ライトノベル大賞への応募を目指したいと思います。
そのため、小説作成の前段階として受賞作の研究をしていきます。

まずは2022年度、第17回の受賞作は下記のとおりです。

獄門撫子此処ニ在リ(伏見七尾)
かくて謀反の冬は去り(古河絶水)
いつか憧れたキャラクターは現在使われておりません。(詠井晴佳)
悪ノ黙示録 -裏社会の帝王、死して異世界をも支配する-(牧瀬竜久)
ドスケベ催眠術師の子(桂嶋エイダ)

全体感想

ダークな雰囲気漂う

この回はどれもダークな雰囲気漂うお話でした。『獄門〜』『かくて〜』『悪ノ〜』はタイトルからしてそうだし、『いつか〜』もコンプレックスと戦うような話です。まぁ『ドスケべ〜』もそれ自体が犯罪っぽいのでダークっちゃダーク。
現実逃避の麻酔効果は比較的弱く、自分も頑張ろうという覚醒効果を読者に与える系の話が集まったのかなぁという感じ。物語としては当然かもしれませんが、主人公がピンチに追い込まれて、能力や知略で乗り越えることが必要です。

自分しか描けないもの、自分しか書かなかったもの

『獄門〜』『かくて〜』は特に、特殊な語彙設定のため、かなり調べるか前提知識があるかしなければ扱えないだろう作品で、作者の能力が見えます。
『いつか〜』も設定が特殊で、ここまで物語展開できたなぁというオリジナリティーと製作力があり、『ドスケべ〜』はまずドスケべ催眠術という設定を思いつき、最後まで書ききり、その看板を背負って作家としてやっていく覚悟がすごいです。普通デビュー作とか特に、格好つけたくなるでしょ?
『悪ノ〜』はいわゆる異世界転生ものですが、マフィアのボスという完全悪の主人公が転生する、という他の異世界転生ものとまったく違う味付け、読み味になっています。

すべてがファンタジー

完全な現代物はなく、現代物であってもファンタジー要素ありです(ああでも、『かくて〜』は魔法とかはなかったか。でも幻想小説ではあるよな……)。
毎回こうではないと思いますが、そっちの方が好かれる傾向があるのでしょうか。オリジナリティのあるファンタジー要素を思いつき、それを軸に話を書ききれば当然そこにしかない話になるので、そういったものを書いていきたいですね。
いや、待てよ……。この賞は上限枚数(150項)が多いからそういうのが集まりやすいのかもしれません。GAや電撃は130項で、MFとか講談社は150項ですが、1項あたりの文字数が小学館よりも少ないです。
老舗賞の中で文字数が多いので、比較的複雑な話が送られがちなのかも。
※集英社など、もっと文字数が多い賞もあります。一応

作品別感想

獄門撫子此処ニ在リ(伏見七尾)

抜群の主人公格の設定で、描写にもものすごく雰囲気がある。意外とグルメものな感じもする。現代物だと思うが、やや時代物を読んでいるような読感もあり雰囲気は秀逸。
ダークとコミカルが融合されていて、バランスも良い。
バトルシーンも独特で、とにかく漫画にしたら格好良さそう。絵的にどんな感じかすごく見たくなる作品だし、和風ファンタジーなので海外にも受ける可能性もありそう。

かくて謀反の冬は去り(古河絶水)

わけわからない世界観で、たくさんの登場人物がそれぞれの思惑で動き回る話。主人公が賢く格好良く、しかし足りないところもあり非常に魅力的。たくさんヒロインが出てくる。表紙のヒロインが野生み溢れて魅力的。
プロットも良く、読み終わりに満足感がある。仲間だからいい人、敵だから悪い人みたいに括れないのが良い。すごいものを読んだ、という気がするものの、私のレベルではちょっと読み落としも多そうなので、もしかすると本当はもっと面白かったか、あるいは過大評価してしまったか、もあるかもしれない。

いつか憧れたキャラクターは現在使われておりません。(詠井晴佳)

何者かになりたい主人公とヒロインの話で、物書きになりたい自分は読んでいてとても痛々しく感じる(青春を感じる的な、いい意味)。ファンタジー部分の説明はほぼなく、そこではなく魅せたいところに力を割いている作品。
主人公の内面的な成長が丁寧に描かれており、文章力もあってそこが青く切ない何かを思い起こさせる。キャラクター論も面白い。

悪ノ黙示録 -裏社会の帝王、死して異世界をも支配する-(牧瀬竜久)

いわゆる異世界転生の俺TUEEだが、転生したのがマフィアの王というアイディアがまず面白い。そして、転生先に出てくる正義の騎士との対比も利いていて、とても惹きつけられた。
一筋縄ではいかないラストもこの物語らしいし、今後の展開も気になる作りになっている。

ドスケベ催眠術師の子(桂嶋エイダ)

序盤からすごく頭悪い(褒め言葉)。物語の間中ドスケべ催眠術という単語が出てきて、全体的にすごく頭悪い(褒め言葉)。結果として、シリアスシーンも笑いどころになっている。
主人公が冷静で合理的な性格なので、そこが物語の空気感とコントラストがきいており、良い。物語もちゃんと転がっており、設定のイメージよりもきっちりした作品な印象。ただしドスケベシーンは少ない(怒)


投稿時の文字数制限が多いので、複雑な設定でも書き切りやすい賞なのでしょう。もしかしたら、他の賞に出そうとして文字数オーバーになったからこっちにした人たちもいるのでしょうね。ライバルは、詰め込んで物語が膨らんじゃいがちな、執筆ジャンキーだ!(知らんけど

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