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サービス消費縮小 リーマン時の実質で6倍、名目で5倍

 日本の4-6月期GDP統計でも明らかになったように、新型コロナ・ウイルスによるパンデミック禍の経済の姿は、輸出の激減は当然としても、国内需要の基盤である家計消費の急激な縮小に集約される。経験したことのないこの姿は米国でも観察され、そして他の国々でも同じであろう。

 今回は、この異常な姿を示した家計消費について眺め、次回に日本独自の問題点を指摘したいと思う。

〇 実質サービス消費、リーマン・ショック時と比較して6倍以上の大幅縮小

 図1は国内家計消費支出(実質)の推移を財・サービスに分けて眺めたものである。今回の推移をリーマン・ショック時と前年比増加寄与度の流れで比較したものである。

家計国内消費(隊リーマン)[2382]

図1. 国内最終家計消費(実質、前年比、増加寄与度、%)

 国内消費支出(実質)は、リーマン・ショック時において景気の底である09年1-3月期に前年比7.3%減と最大の落ち込みを示したが、今年4-6月期には同24.9%減と3倍以上の縮小を、それも急激な形で示している。

 比較して明らかなように、今回の大幅縮小がサービス消費で起こっている。数字的に眺めると、09年1-3月期の前年比寄与度はマイナス3.0%だったのに対し、今年4-6月期ではマイナス19.7%と6倍以上の大幅縮小である。

 新型コロナ・ウイルス感染拡大に伴う外出自粛、在宅勤務などがその背景にあることは明らかである。

 耐久財消費について眺めると、リーマン・ショック時では景気の底である09年1-3月期に初めて前年比でマイナスに転じ、景気回復に入った次の期、4-6月期も前年比マイナスとなったが、その後は前年比プラスで回復に転じている。

 今回の耐久財消費は消費税率引き上げの19年10-12月期から前年比でマイナスに転じ、4-6月期も下げ幅を拡大、3四半期連続で下落を続けている。下げ幅はリーマン・ショック時の2倍程度である。

 半耐久財消費、非耐久財消費の推移は耐久財消費の推移とほぼ同様の動きを示している。落ち込み幅はリーマン・ショック時と比較して、半耐久財消費が小幅ながら2倍、非耐久財消費はほぼ同程度の落ち込みである。

〇 国内消費支出(市場)の縮小、リーマン・ショック時の4倍以上

 それでは上記の国内家計消費を消費市場として眺めてみよう。販売額、利益は名目金額の数値である。そこで、国内家計消費支出の推移を名目値の前年比増減額で眺めたのが図2である。棒グラフは財、サービス消費に対して、2019年10-12月(緑)、2020年1-3月期(青)、4-6月期(赤)でそれぞれの推移を描いている。

家計消費(前年比増減)[2383]

図2. 国内最終家計消費(前年比増減、兆円)

 表1は図1で描かれた前年比増減を3期間ごとに累積し、家計消費支出(市場)の縮小をリーマン・ショック時と比較したものである。リーマン・ショック時の期間は2008年1-3月期をピークとした景気循環で、その後の2008年4-6月期から2009年1-3月期の景気の底までの1年間。それに対して、今回は、消費税率引き上げの2019年10-12月期から今年4-6月期までの3四半期、それと、今年1-3月期から4-6月期の上半期2四半期の期間とした。

表1. 家計消費市場の縮小(兆円)

家計消費(前年比累積)(表)[2384]

 さらに、国内家計消費額に「居住者の海外での直接購入」を加え、「非居住者の国内での直接購入」を控除したものが家計消費支出となるため、表の右側の構成比は家計消費支出の前年比増減を期間累積したものを100とし、それぞれの項目の縮小構成比を示したものである。

 この表を眺めると、国内家計消費支出はリーマン・ショック時1年間で5.0兆円縮小しているが、今回消費税率引き上げ後の3四半期では12.1兆円縮小、今年上半期の半年では10.9兆円の縮小を示し、リーマン・ショック時の半分の期間で2倍以上の大幅な縮小を記録している。単純計算で1年に換算すれば、今年の国内消費市場の縮小は22兆円近くとなり、リーマン・シック時の1年間で経験した消費市場の縮小の4倍以上になる計算である。

〇 国内サービス消費支出(市場)の縮小幅はリーマン・ショック時の5倍強

 同様に表1でサービス消費支出について眺めると、リーマン・ショック時は3.3兆円の縮小であったが、今回3四半期で8.7兆円の縮小である。今年上半期では8.4兆円のサービス市場の縮小であるから、半年でリーマン・ショック時の2.5倍、1年で換算すると5倍強となる。家計消費の縮小に占める割合は、リーマン・ショック時の62%から今回79%から85%へと高まっている。

 耐久財消費、半耐久財消費について眺めると、今年上半期の縮小幅はリーマン・ショック時の縮小幅と同程度である。単純計算で見れば、今年はリーマン・ショック時の1年間の縮小額の2倍のペースということになる。

 非耐久財消費は、リーマン・ショック時の0.3兆円に対し、今年上半期で0.8兆円の縮小と半年で2.7倍、耐久財と半耐久財より若干縮小幅が大きく、外出自粛、自宅勤務などによる外食費や宿泊費の減少、さらにはガソリンの消費減少などが背景にある。

 今回国内家計消費の落ち込み、縮小がサービス消費に集中して発生しているかを再確認するために図3をお示しする。図3は図2と同じ形式でリーマン・ショック時の推移を示したものである。図2、図3を眺めれば、今回新型コロナ・ウイルス感染がサービス業を襲っているか明らかである。

国内家計消費(リーマン時)[2385]

図3. リーマン・ショック時:国内最終家計消費(前年比増減、兆円)

〇 訪日客の国内消費年間3兆円の縮小ペース

 次に訪日客の消費、すなわち「非居住者の国内での直接購入」について眺めると、リーマン・ショック時には前年に対してほどんど変化が無かったが、今年上半期で眺めると、前年より1.5兆円の縮小、1年間換算すると3兆円程度の縮小となる。

 他方、日本人の海外旅行、すなわち「居住者の海外での直接購入」は、リーマン・ショック時0.4兆円の縮小であったが、今年上半期では0.5兆円の縮小、1年間では1兆円の縮小ペースで、リーマン・ショック時の2.5倍程度の市場縮小規模である。

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