見出し画像

動作における肩甲骨動態

こんにちは!理学療法士の田中です.(Insta:output_nodeshi)

前回は手関節の機能解剖と動態をまとめました!今回は肩関節の基礎機能解剖と動作における肩甲骨の動態についてまとめていきたいと思います.

では早速本題に入っていこうとおもいます!

・肩関節の基礎解剖

画像5

肩関節には狭義の肩関節広義の肩関節があります.
狭義の肩関節肩甲上腕関節をさし、広義の肩関節は図の①~④(+α)をさします¹⁾.第2肩関節は構成に含まれまいこともあるようです.

このように肩関節は1つの関節だけではなく、複数の関節が関与していることがわかります.
胸鎖関節は胸骨と鎖骨,肩鎖関節は肩甲骨と鎖骨,肩甲上腕関節は上腕骨と肩甲骨,肩甲胸郭関節は肩甲骨と体幹(脊柱)のように様々な骨が関与し動いています.

肩関節のリハビリは限局した部分だけを評価し介入てもなかなか良くならなそうですよね.まずは関与する各関節の機能解剖と動態を知ることが大切だと思います.今回はそのなかでも,肩甲胸郭関節に焦点を当てていこうと思います!


・肩甲骨の基本動態

画像2

肩甲骨は肩鎖関節を軸に動きます²⁾.
内転・外転,内旋・外旋,上方回旋・下方回旋,前傾・後傾です.

肩関節にはsetting phaseがあります.
これは上腕骨が安定して動くために,肩甲骨が胸郭にしっかりと固定され,肩甲骨の動きが少ない時期といわれます.角度にすると0°~60°です³⁾.


・肩甲上腕リズム

画像5

肩甲上腕リズムは肩関節を挙上していく時に肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節の動く割合いの話です.

正常の肩関節では肩甲上腕関節の外転と肩甲胸郭関節の上方回旋には自然な運動学的リズムがあると言われます⁴⁾.

肩甲上腕関節は外転30°を過ぎると肩甲上腕関節肩甲胸郭関節が2:1の割合で動きます⁴⁾.つまり肩関節挙上180°の時は肩甲上腕関節120°外転,肩甲胸郭関節60°上方回旋しているということです.

これはInmanが提唱している肩甲上腕リズムの割合ですが,諸説あります.ですがどの数値もほぼ2:1に近いものばかりです.


・挙上における動態

画像5

挙上時には肩甲骨は上方回旋・後傾・内旋します³⁾.

矢野らによると挙上時の肩甲骨上方回旋は37±7°,後傾38°±6°,内旋は37°±12°とされています.
また,肩甲骨の下角は最大挙上時に横方向へ13±2㎝上方へ2±2㎝移動します³⁾.

僧帽筋前鋸筋はforce coupleとして作用します.
上方回旋は挙上90°までは前鋸筋が作用し,90°以降は僧帽筋上部線維150°以上僧帽筋の中部・下部線維が作用します⁵⁾.


・結滞における動態

画像4

結滞動作は肩関節疾患において難渋しやすい印象です.
結滞時の肩甲骨は下方回旋・前傾に動きます⁶⁾.

下方回旋も前傾もほぼ同じ16.9°動き,初期には前傾が大きくなります⁶⁾.
結滞時に肩甲上腕関節下垂位から尾骨に達するまでにほぼ全可動域の内旋が行われます.そのため胸椎12番(以下Th12)以降は肩甲胸郭関節主体となっています.

下垂位からTh12までは肩甲骨の前傾が大きくなり,それ以降は減少します.
その際に僧帽筋の下部線維と前鋸筋が作用し下角の浮き上がりを抑制するとされます⁷⁾.


【まとめ】

・肩関節には狭義の肩関節と広義の肩関節が存在する
・肩甲骨の運動軸は肩鎖関節である
・肩甲上腕リズムは2:1である
・挙上時は上方回旋・後傾・内旋する
・結滞時は下方回旋・前傾する



今回は以上になります.最後まで読んでいただきありがとうございました!
肩関節は複数の関節からできているので,局所だけではなく広く全体も評価していくことが大切だと感じます.まずはどの関節においても,機能解剖・動態を知っておくことで評価しやすくなると思いますので,この記事が読んでくださった方の臨床に少しでも参考になれば幸いです.

次回は鎖骨の基礎解剖と動態についてまとめていきたいと思います!
今後ともよろしくお願いいたします.
それではまた…('ω')


【参考文献】

1)藤澤宏幸.肩関節の身体運動と運動療法.理学療法の歩み,21:1,2010.1
2)竹井仁,他.MRI(磁気共鳴画像)を用いた水平面における肩関節の肢位の変化による肩鎖関節と胸鎖関節の関節運動学的解析.The Journal of Japan Academy of health Scienes:51-58
3)矢野雄一郎.三次元的解析装置を使用した上肢挙上・下垂時の肩甲骨運動.Dokkyo Journal of Medical Sciences36(1):T21~T27,2009
4)Donald A.筋骨格系のキネシオロジー.医歯薬出版株式会社.154‐155
5)林典雄.機能解剖的触診技術-上肢-.MEDICAL VIEW.202-204
6)本田俊介,他.結滞動作について-Motion Captureを用いた3次元的解析-.理学療法基礎系47
7)高見武志,他.結滞動作における肩甲骨周囲筋群の筋活動について.関西理学11:65-70,2011



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?