手関節の解剖と動態
こんにちは!理学療法士の田中です.(Insta:output_nodeshi)
前回までは肩・前腕とまとめてきました!今回は手関節の基礎解剖と動態についてまとめていきたいと思います.
では早速本題に入っていこうと思います!
・手関節と手根関節の基礎解剖
手根骨は全部で8つあります.
三角骨,月状骨,舟状骨を近位手根列,大・小菱形骨,有頭骨,有鈎骨を遠位手根列といいます¹⁾.
上記7つの手根骨のほかに豆状骨というものがあります.
豆状骨は7つとは違い直接的に手関節の運動には関与しないとされます²⁾.
近位手根列と遠位手根で構成する関節を手根中央関節といいます.
有頭骨と有鈎骨がはまり込むことで骨の安定性が得られます.
・遠位橈尺関節の機能解剖
手関節とは8つの手根骨と橈骨・尺骨で構成されます.
近位手根列(三角骨,月状骨,舟状骨)と橈骨で構成する関節を橈骨手根関節といいます.
また,手関節部分(遠位)で構成する橈骨と尺骨の関節を遠位橈尺関節といい,肘部分(近位)で構成する橈骨と尺骨の関節を近位橈尺関節といいます.
遠位橈尺関節は長橈骨月状靭帯と背側橈骨手根靭帯が主に制動しているため,靭帯での安定性が得られます¹⁾.
・掌屈と背屈の動態
背屈と掌屈の参考可動域は70°と90°です.
2つの動きは,メインで動く関節が少し変わっています.
背屈時は手根中央関節33.5%、橈骨手根関節が66.5%と橈骨手根関節がメインで動きます.
掌屈時は手根中央関節60%,橈骨手根関節が40%と手根中央関節がメインで動きます¹⁾.
手関節に作用する筋は近位列には付着しておらず,全て遠位列の骨に着きます⁴⁾.そのため,手根中央関節を動かす時は遠位列に着目していくのが良いかと考えます.
ROMexを行うときに,どこの関節の動きが出ていないのか,何が制限になりやすいのかを把握しておくと良いかと思います!
特に橈骨遠位端骨折の術後はROM制限が出やすい患者様が多く見受けられますので,覚えておくと良いかもしれません.
・撓屈と尺屈の動態
撓屈の参考可動域は25°,尺屈は55°です.
撓屈は純粋な運動ではなく,掌側に回転しながら近位列が尺側へ滑ります¹⁾.これは舟状骨と橈骨茎状突起とのインピンジメントを防ぐためとされています.尺屈時には背側回転しながら近位列は撓側方向へ滑ります.
・回内と回外の動態
回内と回外の参考可動域は両者90°です
遠位橈尺関節の動態は尺骨が橈骨の周りを回るWiper movementといいます.また,近位橈尺関節の動態は,橈骨頭が輪状靭帯の中で回るように動くためSpin movementといいます²⁾.
回内外の運動軸は,橈骨頭中心ー尺骨頭小窩部を通ります.
また,回内外の運動は橈尺靭帯により制動されています³⁾.
回内時は背側浅枝と掌側深枝が緊張し,回外時は背側深枝と掌側浅枝が緊張して制動します.
【まとめ】
・手根骨は8つ存在し,それぞれ近位手根列と遠位手根列に分かれる
・遠位橈尺関節は靭帯性での安定性がある
・掌屈と背屈ではメインで動く関節が異なる
・撓屈と尺屈は回転しながら動いている
・遠位橈尺関節での橈骨の動きをWiper movementという
今回は以上になります.最後まで読んでいただきありがとうございました!
遠位橈尺関節だけではなく,各関節がどのように動いていくのかを覚えておくと異常やROM制限の原因をみつけやすくなると考えおります.
この記事が読んでくださった方の臨床に少しでも参考になれば幸いです.
次回は肩甲帯についてまとめていきたいと思います!(たぶん2部構成?)
今後ともよろしくお願いいたします.
それではまた…('ω')
【参考文献】
1)大森信介.手関節のバイオメカニクス.Jpn J Rehabil Med 2016:53:762-764
2)林典雄.運動療法のための機能解剖学的触診技術-上肢-.MEDICAL VIEW
3)工藤慎太郎.機能解剖と運動療法.羊土社
4)Eschweiler J, et al. Anatomy, Biomechanics, and Loads of the Wrist Joint. Life (Basel). 2022 Jan 27;12(2):188.
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?