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『春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなくたたむ 名こそ惜しけれ』周防内侍

《意味》
短い春の夜の夢のように儚いたわむれの手枕のせいで、つまらない浮名が立ったとしたら悔しいだけですよ

これぞ恋愛ゲーム。男女の艶っぽい、色めいたやり取りの一首です。

周防内侍は後冷泉天皇、後三条天皇、白河天皇、堀河天皇の四代の長き、実に40年にわたって天皇に仕えた女房。人望が厚く、一流歌人としても名高かったようで、頻繁に歌合にも参加していたようです。
それだけ長く仕えていただけあり、宮中ならではの男女の色っぽいやり取りもお手のものだったのではないでしょうか。
今日の一首にはそんなことが窺えるエピソードがついています。

旧暦2月、今で言うところの3月から4月頃の月の明るい夜に、二条院で女房たちが夜更けまで話をして盛り上がっていましたが、周防内侍がふと眠気を覚えて「枕が欲しいなぁ」と呟きます。すると御簾の下から「これを枕にどうぞ」と腕が差し込まれてきたというのです。そこで驚いた周防内侍が詠んだのが「春の夜の」の歌でした。
「手枕」というのは今で言うところの腕枕。男性が腕枕をしてくれるシチュエーションといえば、もう、わかりますよね。

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