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『恋すてふ 我が名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか』壬生忠見

《意味》
恋をしているという私の噂が、早くも世間に知られてしまいました。誰にも知られないようにと、ひそかに想い始めたばかりだというのに。

前回第13回のいろはおとで扱った、平兼盛の「忍ぶれど」と歌合で対決をした一首です。

実はこの壬生忠見にとって、村上天皇主催で行われた歌合に出席するというのは、一世一代の栄誉であり大勝負でした。
というのも当時忠見は摂津国の役人で、都の人々から見ると田舎住まいの地方官。この時の様子を記した袋草子には

田舎の装束のままにて、柿の小袴衣を今にもちて肩に懸く

とあり、歌合に出席していた周囲の都びとたちは、忠見を田舎者であると内心馬鹿にしていたような様子がわかります。

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