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『八重葎 しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり』恵慶法師

《意味》
幾重にも重なってつる草が生い茂るこの寂しい住まいに、人は誰も訪ねてこないけれど、秋だけはこうしてやってきている。


静かに静かに、訪れる秋。季節の移り変わりが切なく、しかしあたたかい一首です。


詠まれている「八重葎のしげれる宿」、こちらは以前「みちのくの」でご紹介した源融が建てた河原院のことだと言われています。
河原院といえば豪華絢爛を尽くした別荘、風流を愛するたくさんの人々が訪れ、華やかさの象徴であった場所です。陸奥国の塩釜の景色を再現するために、毎日何百リットルもの海水を運ばせる贅の尽くし方。在原業平はじめ多くの歌人たちが足を運んだとされています。
そこから100年の時が経ち、華やかさは見る影もなく、「荒れたる宿」とお題になるまでになってしまった。
しかしさすが河原院、「荒れたる」と言っても、そこには侘び、さび、風流さが残されており、歌人たちが想いを馳せる場所でした。

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