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『わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ あまの釣り船』参議篁

《意味》
漁師の釣り船よ、都に残してきた恋しい人に告げておくれ。私は大海原の多くの島々を目指して船を漕ぎ出していったよ、と。

悠々とした真っ青な海。白く上がる波飛沫。風を受けながら真っ直ぐに背を伸ばし船に立つ一人の男の姿。
そんな絵が浮かぶ、堂々たる一首です。

この歌を詠んだ参議篁こと小野篁は平安時代初期の官僚でした。遣隋使で知られる小野妹子の子孫で、一説には絶世の美女・小野小町の祖父とも言われています。
とても賢い人物だったようで、優れた学者として活躍しましたが、反骨精神も強く、「小野」と「粗野」をかけて「野狂」という有り難くないあだ名がついていました。
平均身長160㎝程度の平安時代に小野篁は188㎝、武芸にも秀でており、乗馬・弓術・剣術などなんでもこなした文武両道、エリートで男前。性格に難ありといえども女性には大変モテただろうなと想像できます。

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